ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■ノート言えない僕。
「パパー、これいっしょにやろー」
と娘・R(10才)が持って来たのは1冊のノート。表紙には
「パパとRのこうかんノート」
そう書かれていた。交換日記か!
「そういえば、前やってたよね」
以前は僕とRと息子・タク(8才)の3人で回していたのを思い出した。タクが飽きてやめてしまったため終わってしまったのだった。
「だからね、こんどはパパとRのふたりでやるの。でもたっくんもやりたいって言ったら入れてあげるの」
「ふーん。でもRはお友達ともやってなかったっけ?あれも終わっちゃったの?」
Rは確かクラスの女の子数人ともノートを廻していたはずである。中身をちょろっとだけ見せてもらったことがあるけれども、やはり小さいとはいえ女の子で、誰々の好きな人は誰?とかそんなことがキャアキャア書いてあった覚えがある。そしてある子が書いた
「○○(あるクラスメイトの名前)ってどう思う?私だいきらい」
という問いかけには「私も!」「私も!」と怒濤のレスが付いており、やっぱ女って怖いわ、と震えたものである。
「うん…終わっちゃった」
Rは何かワケアリのような、言葉を飲み込んだような返事をした。子供ながら何らかの事情があったのかもしれぬ。それでも再びノートを持ち出して来るということは、よほどやりたいんだろう。
「わかった。やろう」
熱意に押されてイヤとは言えなかった。かつて僕は、近所のゲーセンにいたRちゃんというとてもカワイイ女の子とほぼ毎日手紙の交換をしていたことがある。そのRちゃんの名前をそのまんまRに付けたんだよ…ということはまだRには言えていない。
さて、Rからノートを預かって開いてみると、すべてのページにRが考えたフォーマットが既に書かれていた。まずフリースペース、ここに文章を書く、そして「今日のよかったこと」、「今日の悪かったこと」、「うわさばなしコーナー」、などなど…、R、気合い入りすぎ。
まずRが書いた「うわさばなしコーナー」には
「はんざわなおきの最終回にカメラマンがうつってるんだって!(みこちゃんが言ってた)」
という今更それかよ的なネタが書いてあった。
Rが書いた内容はいいとして、僕は一体何を書けばいいのか。なかなか筆が進まない。Rがやりたいことって、やはり誰々は誰々を好きで…とかそういう恋バナ的な内緒話を内輪でヒソヒソキャアキャアすることなのではないだろうか。交換ノートの最大の楽しみって内緒話の共有にある、そう思う。
しかし僕はRと同じクラスの女子小学生ではないのでそんなことは知らぬ。書けぬ。となると、親らしく説教めいたことを書くのか。それこそRが読みたくないテーマ筆頭な気がする。
となると天声人語チックに、身近な話や時事ネタから無理矢理政治経済の話にこじつけるような話にするか。子供相手だから池上彰さんばりにわかりやすく噛み砕いた文章にすることも必要だ。
…なんだかメチャクチャハードルが高くなってしまった。こんなんではすぐ息切れしてしまうだろう。
やはり普通に、日常生活ネタを書いてみようか…と書き始めてみた。まずフリースペースの文章には
「日曜日食べたラーメンはおいしかったね。あのお店は○○といってこの辺じゃ有名な店で…」
一緒に食べたラーメンのことを書き、「よかったこと」のコーナーには
「ラーメンおいしかった」
と書き、「うわさばなしコーナー」には
「××のラーメンもおいしいらしいぜ」
と書き、ってラーメンのことばっかじゃないかー!小池さんかよ!全部消して頭を抱えた。しょっぱなから交換ノートを終わらせてしまいそうなぐらい難産である。ネタが思い浮かばない。
このままだと交換ノートが休刊ノート。なんちて
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03月12日(水)
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