ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■熱き法要。
お寺で父の十七回忌が執り行われた。
母と、僕ら家族と、弟、の身内だけ。あと叔父(母の弟)が来る予定になっていたのだが、
「15分前に来るって言ってたのに…あれはいつもそうだ」
開始時間になっても一向に来る気配がなく、母がイライラしながら電話をしようとしたら、母、ケータイ忘れてるし。母のケータイしか叔父の番号を覚えていないため連絡が取れず、お坊さんの後の予定も詰まっているので始めてもらった。確かに叔父さんは抜けているところがあって、それでも憎めないのは人徳なのか、単に身内だからか。
お坊さんがまず十七回忌とは、というお話をする。もう17年も経つんだな、と思った。あの頃のお坊さんはもう亡くなってしまって、今いるお坊さんはその息子さんだ。そして退屈そうにしている娘・R(10才)と息子・タク(7才)などは影も形もなかった。
「この子らを見せてやりたかったよね」
と母が言うが、父が亡くなってから7年も経たないとRが産まれた年にならず、やはり父が亡くなるのは早過ぎたなあ…などと考えてふと気付くと、お坊さんは既にお経を読み始めていた。
「それではお焼香を…」
お焼香をするタイミングになると、Rは煙が大嫌いなので顔を背けていやいやながら、タクは
「これどうやるの?これこうやるの?」
なんかスゴいワクワクして僕のやり方を真似てやっていた。そして、このお寺ではいつもそうなのだが、お坊さんと一緒に僕らも般若心経を一緒に唱えるんである。ふりがな付きの般若心経が書かれた紙をもらって、「かんじーざいぼーさー…」と。
どうでもいいが、「ぎゃーてーぎゃーてー、はーらーぎゃーてー」あたりがサビのような気がする。このへんが一番盛り上がり、そして、「はらそーぎゃーてーぼーじーそわか」あたりでだんだんスローになり、「はんにゃーしんぎょうー」で締め、ジャカジャーン、とエンディングを迎えるのだ。
子供達も結構真面目に唱えており、頼もしいことである。僕が死んだ時もヨロシク頼むぜ。る。
ひととおり法要が終わってからはお墓参り。この時にようやく叔父が現われた。
「え、10時からだったの?11時からだと思ってた」
ととぼけていたが、そういうのは母はお見通しで、
「ウソつけ!いつもそういう言い訳してるからメールしておいたんだ!」
とプリプリ。もう何十年もこういうやりとりしてるんだろうなあ。ともかくようやく全員で父の墓に行き、掃除をして線香をあげる。タクが
「お金がもらえますように」
と手を合わせているので
「願い事をするのはちょっと違うと思うぞー」
一応ツッコミを入れておいたら
「じゃ、お小遣い。よかったな。願いが叶ったぞ」
叔父がRとタクにポチ袋を渡すではないか。
「あああ、ありがとう叔父さん」
僕も小さい頃こんな風にもらってたっけなあ。
こうして父の十七回忌は滞りなく執り行われ、
「はー、よかったよかった」
「お疲れさん」
母の肩の荷が降りたようだった。家に帰って礼服を脱いで僕らもくつろぐ…はずだったのだが
「しょうけんごー、うんかいくー!!!」
タクがお寺からもらってきた般若心経の紙を見ながら大声をあげていた。
「おー。なかなか熱心じゃないかい」
「しんむーけーげー、むーけーげーこー!!!」
「タクなら暗記できるんじゃないの?」
「ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー!!!」
「うーん、ちょっとうるさいかなー」
どうやらはまってしまったようだ。元気が有り余っているようで、この勢いのまま高野山とかにブチ込んだ方がいいのだろうか。わんぱくでもいい。逞しく育って欲しい。
男は読経。なんつって。
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09月26日(木)
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