ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
[5183118hit]
■ラッシュアワーのチミと僕。
朝、子供達と一緒に家を出て。
僕は駅、子供達は学校への別れ道でバイバイして。
ひとりで駅に向かって歩いていたら
「…とー…ちょっ…そこのひと…」
後ろから女性の声が聞こえてきた。ばんばん走る車の音でよく聞こえないが、誰かを呼んでいるような。その誰かというのは僕のような気もするが、
「そこの人」
とか呼ぶような見知らぬ人には関わりたくないなあ…ということで決して後ろを振り返らず、足早に駅まで歩くことにした。ところが
「ちょっと!」
「うわあ!」
肩をぐっと掴まれてしまい振り返ってみたら…嫁だった。お前は自分のツガイを「そこの人」と呼ぶのか。
「で、なんで君がココにいるの」
子供達と家を出た時には普通にウチの中にいたはずなのに、いつの間に追いついたのだ。
「健康診断なの」
と嫁は答えた。
「どこで」
場所を聞くと、飯田橋だという。途中の乗換駅まで一緒に電車に乗ることになる。嫁は普段電車に乗らないので、
「パスモにいくら残ってたっけなー」
と券売機にパスモを突っ込んでみたり、
「まだ980円もあるからやっぱチャージしない!」
もの凄い勢いで取り消しボタンを押しまくっていたりで、無駄な動きなど一切ないラッシュアワーの通勤客達と比べ、素人感丸出し。
ちょっと一緒に歩くのが恥ずかしくなってきたが、でもふたりで電車に乗るなんて何年ぶりだろう…と懐かしい気持ちになった。おそらく娘・R(10才)が産まれる前以来ということになるので、10年以上ぶりになるのだ。
デートしてた頃を思い出すなあ…と甘酸っぱい気持ちになり、ホームで電車を待っている間、嫁の手を握ってみたら無言で振り解かれた。
電車が来て乗り込んだところ、嫁が入口付近で詰まっていたので
「こっちこい」
中まで来させようと再び手を握って引っ張ったら今度は握り替えしてくれたが、車内中ほどまで辿り着いた時点でまた振り解かれた。おのれ、昔は手どころか腕組んで巻き付いてきたくせにいいい。確かにオッサンオバサンのツガイが手を繋いでいてもビジュアル的にアレだけどさ…。
別にガン無視されたわけでなく、普通にボソボソ喋りながら乗っていたわけだが、すぐ嫁の乗り換え駅になってしまった。嫁が降りようとすると、変なものでちょっと寂しくなってしまったではないか。
まるで、かつて息子・タクを幼稚園に送って行き、先生に引き渡す時に、
「ママー」
と泣いて悲しんだように…。そんなことを思い出して、降りようとする嫁に、
「ママ、バイバイ」
つい寂しさの照れ隠しにタクのマネをして手を振ったら、嫁はなんか苦笑いして降りて行ってしまった。確かそんなチャイルドプレイまがいのことを公衆の面前でする僕の方がおかしいのだけど。
嫁とかけまして、急行列車とときます。
各駅停車の駅と辟易亭主は通過でしょう。なんちて。
←これだけでもいいので押してね。
←こちらもできれば。
はてなアンテナに追加
09月05日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る