ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■池袋の胃袋。
とある休日、池袋で昼飯を食うことになった。
どこがよかんべと店を探す僕に、ルミネの上の方にバイキングのお店があるよ、と嫁が言うのでそこに行くことにした。
9階にまで昇っていくとなるほどいろんなバイキングの店がある。しかし嫁がオススメするのは、パン食べ放題の店だった。
「えー。食べ放題なのはパンだけなの?」
「そうだよ。私パン大好き」
「僕、ゴハン党なんだけど」
パン食べ放題と言われても全然嬉しくない僕である。(女子高生の)パンツ見放題だったらいいんだけど。
「ゴハンもあるよ。お代わりし放題だよ」
と嫁は言うが、それ、バイキングじゃなくて、ただの「やよい軒」だし。僕は普通に料理とかデザートとか色々選べるバイキングのお店を勧めたのだけれども、なかなか説得するのに苦労した。
「こっちのお店はケーキも選べるぜー」
と誘っても
「パンが…」
そんなにパンが好きだったのか嫁。ケーキよりパンとは逆マリーアントワネットである。そのうち子供達も腹を減らして一揆を起こしそうな勢いだったので、
「まあいいか」
と、パンじゃないほうへ入った。僕はとにかく腹が減ったので目に付いた美味しそうな料理からドカドカ山盛りで。一方嫁は
「全制覇するからね!」
ひとつひとつをちょびっとずつ皿に載せている。嫁はバイキングの時は必ずコンプリートを目指す。モバゲーとかグリーのカードゲームをやらせたら思いっきり課金しそうなタイプである。
僕は好き嫌いが多いためこういうことは出来ない。好きなモノだけを固め打ちである。子供達はというと、息子・タク(7才)はデカイお皿に敢えてちょろっとずつしか料理を持ってこない。すぐ食べ終わっては嬉しそうにまた料理を取りに行く。自分で取って持ってくること自体が楽しくてしょうがないようだ。
ただあまりにもワクワクし過ぎていて浮き足立っているため、端から見て危なっかしくてしょうがない。
「走るなよ!ぶつかるなよ!前見て歩けよ!」
最早交通安全指導である。そして娘・R(9才)はわりとのんびりで、嫁はメニュー完全制覇を目指し、タクはセルフサービスが楽しくてちょこちょこ席を外していたが、僕とRは一緒に腰を据えて食べてことが多くて、
「あのねー、こないだももかちゃんとお絵描きしたのー」
なんて話ながらゆったりとしたランチを楽しんでいた。いいねえ、Rが一番優雅なバイキングの楽しみ方をしているねえ、と思っていたが、タクが大皿にほんの少しの料理しか載せないのに、すぐ違う新しいお皿を持ってくることに対し、
「まだそのお皿に料理のっけられるでしょ!もったいないよ!」
何故かお店のスタッフかよ、みたいなことをタクにダメ出ししていて、中途半端にお姉さんっぷりが出てきている今日この頃。
そんな感じでひたすら食いまくる我ら餓狼家族であったが制限時間というものがある。僕はめぼしい料理はほぼ食べ尽くしてたいぶ満足していたので、締めのカレーを食べながら時計に目をやると、残り15分ほど。
「あと15分ぐらいだ!」
まだ食べたいヤツは早くしろ、とケツを引っぱたいた。嫁は最後のアタックとばかりにせかせかとまだ食べていない料理を集めて来、僕のカレーにスプーンをぬっと入れてペロッと舐め、
「カレーはこれで食べたってことでOK」
などと言いつつスパートをかけ、
「うううう…全部食べた…苦しい…」
呆れたことに本当に全メニュー食べきったらしい。しかしその苦しそうな姿は3人目が生まれそうなほどであった。
Rは最後までマイペースで、デザートのケーキやプリンをニコニコと食べ、満足げな様子。Rとは対照的に、タクは慌てていた。
「えー、もう終わりなのォ、ボクまだ食べたいよ」
「だからふざけてないでとっとと食べろって言ってたでしょ」
「ねえ!パパ!」
「なんだよ!」
タクがそっと僕に耳打ちしようとするので近付いてやると
「う・ん・ち」
なにいいいい。
「トイレコッチだから来い!」
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03月13日(水)
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