ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■壊れかけのRADIO。
朝、嫁は子供達にゴハンを作って、あたふたと僕らより先に出かけて行った。
職場の研修だそうで、丸1日潰されるのだという。なので僕が子供達を遅れないように行かせないと行けない。更に嫁は夜も帰りが遅くなるので、嫁母を呼んだのだそうだ。
「ちゃんと布団畳んで行ってよ!忘れないでよ!」
嫁はしつこいほど僕に念を押す。嫁母も嫁に似て(逆だっつの)キッチリ家事をやる人なので、だらしないとツッコミを入れられたくないのだろう。
朝はいつも「早くしろ!」と煽られながら支度をする子供達。今朝も娘・R(9才)はゴハンを食べるのが遅いので
「早く食べなさい!」
と急かし、息子・タク(7才)は食べ終わっているのだがその他の準備をせず、何故かあやとりをしているので
「遊んでる時間じゃねえだろ!顔洗え!歯を磨け!着替えろ!」
こちらも急かす。Rは遅いことは遅いのだが、素直に言うことを聞くのでよいが、タクは基本的に言われたことは右から左なので、2分後には忘れているという鳥頭。この時も着替えてる途中なのにパンツいっちょで
「ね〜ぎはすごいよ知ってます〜か!」
と踊っていたので叱りつけた。更に2分後は僕が着替えている間の目を盗んで、今度はラジオをいじくって遊んでいた。このラジオは嫁母のものである。嫁母はいつもラジオを聞きながら家事をするので、今日来たときのために嫁が出しておいたのだ。
「いい加減にしろ!」
いくら温厚で仏のオヤジである僕でも仏の顔も三度、さすが怒鳴りつけると、タクは泣きそうな顔になっていた。お、怒鳴り声が効いたかと思ったら、残念ながらそうではなかった。
「アンテナ折れちゃった…」
アンテナをいじくり回しているウチに、力を入れてはいけない方向に力を入れてしまったのだろう、根元のくびれ部分からポッキリ折れてしまっていた。
「これじゃラジオ聴けないだろ!どうすんだ!」
「うわああああん!」
タクは号泣して取り乱し、セロテープをべべべと引っ張ってきてぐるぐる巻き始めたが、そんなんでくっつくはずもない。
「これはもう無理だよ…」
細い部分なのでアロンアルファでも固定できない。タクは絶望のあまり声を失ったが、
「遊ぶなって何回も言ったよね?単に間違いで壊したならここまで怒らないけれど、言うことを聞かないで、親を舐めたようなことしてっからこうなるんだよ!」
自業自得である。朝のクソ忙しい時なのでイライラもしていたので、許してやる気持ちなど微塵もなかった。タクは泣きながらランドセルを背負いつつ
「ううう…もういいよ、どうせママにも怒られて外に出されるんだ!」
若干逆ギレし始めてきた。
「そうだな。おばあちゃんとママにも謝って、うんと怒られろ」
嫁って外に出すことなんてしてたっけ…と思ったが、この時はタクに優しい言葉をかける気はなく、突き放すことしか言わなかった。そしてタクは泣きながら学校に行った。子供達を見送った後、嫁にその旨をメールし、嫁母に伝えてもらった。
夜、帰って来てから嫁に聞いてみた。
「ごめんねー。お母さん、ラジオ聴けなかったでしょ?」
「AM放送は大丈夫だったみたいよ」
FMはダメだったようだが…。とりあえず聞けることは聞けたため、あまり怒られなかったようだ。
「タクはしょぼくれてるかビクビクしてなかったかい?」
朝は泣きながら学校に行ったんだ、という話をすると
「全然。折れたアンテナでチャンバラしようかとか言ってたよ」
おのれ全く懲りちゃいねえ。やっぱり鳥頭だ。あ、あとひとつ気になることがあった、と思い
「君は外に出すお仕置きをしてるのかね」
と聞いてみたら
「しないよ!それ、Rが教えてくれたよ。『たっくんが、ママに外に出されるって泣いてた』って」
「じゃあどっからそんな話を思い付いたんだろ」
「○○さんち(向かい側の家)じゃないの。よく出されてるから」
「あー」
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02月22日(金)
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