ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■東京だよおっ傘ん。
あれは、小学校で炊き出し訓練の手伝いを終えた時のことじゃった。
校門を出たところでちょうど
「パパー!」
と声がした。娘・R(9才)が道の向こうにいるではないか。ふたりのお友達も一緒だ。近くで遊んでいた帰りのようであった。
「やあ、おいら、Rのパパってんだ。怪しくないよォ」
Rの友達に余計怪しまれるようなことを話しつつ一緒に歩き、分かれ道でサヨナラした。
「パパー、傘持ってえ」
雨が降りそうだったので持たせていたRの傘を受け取った。何気なくひょいと上向きにしてみると
「あああ?何でこんなに曲がってんだ?」
見事なまでに「く」の字になっているではないか。試しに開こうとしたらやはり曲がっているため途中までしか開けない。どーなってんのよこれ、とRを問い質すと
「えっ…R、しらない。なにもしてないよ」
「知らないわけあるかー!」
何もしてないのに動かなくなりました…みたいなパソコンの初心者かっつーの。傘を持たせた時は曲がってなかったはず…曲がっていれば今のようにすぐ分かるはず…と、考えていたら、お友達のひとりが自転車に乗っていたことを思い出した。
僕もよくやったが、自転車のハンドルに引っ掛けて乗っていると、ハンドルを曲げた時に傘が引っ掛かってテコの原理で曲がったり、先っぽが道路の段差に引っ掛かってやはり曲がったり折れてしまったり、ということがある。
「もしかして、自転車のハンドルに引っ掛けてたら『おっとっとー!』とかならなかった?」
と聞いてみたら
「あ、それだ」
Rはしれっとそう答えて絵に描いたような「てへぺろ」な顔をした。
「ほら、何もしてない、なんてことはないんだよ。もっと大切に使いなさいよ…」
「パパに言われるまで分からなかったんだもーん」
おのれ、叱ろうとするのだが可愛くてどうしても勢いが鈍ってしまう。一緒に買いに行って選んだ、お気に入りのピンクの傘だったのに。
「じゃあ新しい傘は自分のお金で買いなよ」
「えー」
辛うじてそれだけ言って、物の大切さを教えた…つもりである。
ちなみに僕はどんな傘がお気に入りかというと、伊藤つかさが好きでした(古いなあ)
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12月05日(水)
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