ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■つぐない。
栃木の実家から帰る日。
僕と嫁は帰るけれども娘・R(9才)と息子・タク(6才)は水曜日まで栃木に留まることになっていた。
「じゃ、おばあちゃんとやっちゃん(僕の弟)の言うことをよく聞くんだよ、そんじゃねー」
夕方、わりとあっさりと子供達に挨拶し、駅まで送ってもらうため母の車に乗り込んだ。子供達は連れて来なかった。僕の弟と留守番である。というのも、Rは大丈夫だけれども、駅の改札で別れ、電車に乗って見えなくなるまでパパとママをお見送り…みたいないかにもお別れのシチュエイションは、タクが号泣するからである。
「ママ!ママあああああ!」
パパと叫んで泣いてはくれないのだが、とにかくタクがナーバスになってしまうのであっさり帰った方が精神衛生上よかろう、という判断であった。僕はもうちょっとRと「お別れのちゅー」とかして名残を惜しみたかったのだけれども。
嫁と電車に乗ると、車内はガラガラであった。だれも座っていないロングシートの端に座ると、嫁も隣に座った。走り出すと、西日が強烈に差し込んでくる。
まーどーに西日がー当たるー部屋はー、いーつーもあなたのー匂いがーするわー。
そんな歌があったっけ…と思い出しつつ、おっとこれは別れの歌じゃないかよ、ということも思い出した。嫁と一緒にいるのに縁起でもない…とヒヤヒヤしたらその嫁が急に席を立ち、僕からずいぶん離れたロングシートのもう片方の端っこに座り直すではないか。
「なんでそんなに離れるんだよっ!」
めちゃめちゃ冷えた夫婦みたいじゃないか、と言うと
「ココまで来ないと西日が当たるから…」
そういうことなら仕方がないか…。何個か目の駅に着くと、そこから入って来たおっさんが僕の隣に座った。何故嫁と一緒に乗ったはずなのに、見ず知らずのおっさんが隣なのか。
よそよそしい距離感のまま家に着いて実家に電話すると
「いまねえ、トトロ見てるのよ〜」
ジブリ映画を鑑賞中とのことで、親はいなくてものびのびと過ごしているようであった。心配したタクの寂しんぼう将軍も大丈夫のようで、翌朝

「にめんできたよ たく」
と母から画像とメールが送られてきた。実家にはルービックキューブがあって、タクはよくやっていたのである。それにしたも上達が早い。ていうか2面だけ揃えるってのは6面揃えるより難しくないか?僕は6面揃えることは出来るけれども(ガイドを見ながら)、それはまず1面揃え、側面4面の1列目を揃え、2列目を揃え、最後に3列目と裏面を揃えて一気に6面揃えるため、逆に2面だけ揃えるというやり方を知らないのだ。
「どんどんキューブがじょうずになるね」
とタクが喜びそうな褒め言葉を考えて返信してやった。
そんなわけで子供達がいないので妙に静かで気の抜けたような家の空気。せっかく嫁とふたりきりなのだから…と子供の前では出来ないようなことをしようと思い、とりあえずお尻を触ってみたら思いの外マジギレされたので意気消チンしてしまった。
タクはキューブが上手くなったけれども、床の男女混合団体競技などを行なう夜の体操部は休部となりました。
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08月15日(水)
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