ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■ハッパトルサンデー。
日曜日の昼前ごろ。
休日も開放されている小学校の図書室に行く。
娘・R(8才)と息子・タク(6才)が本を借りているため、その返却と新たな本の貸し出しのためである。
図書室の扉を開けると、係の人、おそらく誰かのお母さん以外は誰もおらずひっそりとしていた。
「どもー」
「こんにちはー」
「こんちくわ」
僕ら3人、それぞれバラッバラな挨拶をしてRとタクは本を返し、新たに借りる本を探す。僕はヒマなので本棚などを眺め、「シナの五人兄弟」とか懐かしい本を見つけておおおっと驚いていたりしていた。
急に、どばーん、と扉が開いた。Rと同じクラスの男の子が入って来た。この子はよくこの図書室で会う。本を借りるわけでも読むわけでもないどころか、仮面ライダーの変身グッズとか全然関係ないものを持って来たりしていて、とりあえず図書室にいてなんかグダグダしているのである。
この子のように、Rもタクも僕が引率せず、子供達だけで来させてもいいのでは…と考えるのだが、いつもそう考えているうちに
「○○三丁目で、女子児童のジャージを脱がそうとする男が現われました」
というような防犯メールが区から送られてくるので躊躇してしまうのである。わりとこの手の情報は多く、月1〜2ぐらいはあるように思う。今週の変態さん、みたいな感じである。特に近所での出没だととてもRをひとりで外に出す気になれない。
で、その男の子なのだが、わりとタクのような飄々とした子なので、
「やあ」
と軽く小突いてみると、その子の手の甲に
「くわ」
と書いてあった。
「くわ…桑の葉か!蚕のエサ?」
「そうだよ」
R達の学年は蚕を育てている。休日は家に持って帰っており、僕もその姿を見た。彼は校庭にある桑の木から葉っぱを採ることを忘れないよう、書いておいたのだそうだ。
「Rも採ってってやれば?みんなで行こうぜー」
というわけで本を借りた後、桑の木まで走って行った。校庭では学童野球の練習が行なわれており、
「ふふふ、懐かしいなあ、僕もあんな頃があったなあ」
…とノスタルジックな気持ちになったが、よく考えたら僕、学童野球なんてやってなかった。
男の子は早速葉っぱをプチプチともぎり採る。
「ねえねえ!茎からなんか白い汁が出てるよ!」
うーん。この子が中学生ぐらいだったら
「へっへっへ、大人になれば君の体からも…」
とか下ネタをぶちかましたいところだが、まだちょっとやめとこう。それこそ僕がメールに載る。一方でRはぼーっと見詰めているだけだったので
「Rも採れば?」
と言ってみたら
「パパ採って」
自分の手は汚したくないタイプなのか。蚕に名前まで付けて可愛がっていた癖に…。白い汁がイヤなのだろうか。
「ほら、可愛いお蚕さまのために持ってってやんな」
「やだー。パパが持って行って」
本当に何故そこまで避けるのか。
桑だけに、桑ず嫌いってか。
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06月05日(火)
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