ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■真剣ゼミ。
「これ、やりたーい」
朝、起きるとすぐさま息子・タク(6才)がずっしりした封筒を持って来た。
「進研ゼミか…」
ベネッセのダイレクトメールは、勝手に人ん家の息子の個人情報握ってガンガン送りつけるんじゃねーよ、ってぐらいしつこい。中身も勧誘マンガだったりアニメ付きDVDだったりあの手この手で入会させようとする。その執拗さと狡猾さは新聞勧誘より遥かに上であり新興宗教並みの不気味さがある。で、タクもコロッとはまってしまったようだ。
「わ、私もさんざんタクにねだられたんだけど、しつこくてもう断る理由がなくなっちゃったからお願いします…」
嫁は既に相当タクにおねだりされたらしく、ヘロヘロと僕に言う。もちろん僕の答えは
「ダメ」
「なんで!ちゃんとやるから」
「すぐ飽きるっぽいからダメ。今やってるピアノだってうるさく言われないと練習しないくせに、ちゃんちゃらおかしいわ!」
僕自身も似たようなのを買ってもらった記憶があるが、ろくにやらなかった。あとケースバイケースだろうが、僕が子供の頃も進研ゼミをやっている子はいたが、みんな成績はそんなよくもなかったし…。
「やるとしても、もうすこし学年が上になって、勉強が難しかったらにしようよ」
と、頭をなでて仕事に行こうとしたら、手をバシンと跳ね除けられた。顔を覗き込むと、
「し、静かに泣いている…」
無言のまま涙を溜めているではないか。無言のまま目からこぼれるひと筋の涙…。何か言葉をかけてやりたかったが仕事に行く時間になったので、これ以上なだめることは出来なかった。
そして夜、帰って来て嫁に聞いてみると、やはりタクはまだ諦めてなかったという。
「自分のお年玉を出して、『ボクがお金出すから』とか言うし、そこまで言うならやらせてやろうかなあ。但し2ヶ月契約で…」
その熱意に嫁は陥落していた。僕としては
「ピアノだって言われないと練習しないんだから無理だろ」
と反対すると
「いや、するよ。R(8才の娘)よりは自主的にする」
むう。嫁がいる時と僕がやらせる時と反応が違うのか。僕、なめられてるなあ。
「入学したら学校の宿題だってあるし。併せてこなせるかねえ…」
Rは国語の教科書の音読と、週末に書かなければいけない日記の宿題だけでアップアップである。
「いやー、ヤツはやると思うよ。今だって自分で問題作ってやってたりするし」
とタクの能力を買いながらも
「でも基本が出来てなかったりするんだよね。ピアノもそうで、私は出来てると思っても先生に『間違って覚えちゃったかな』って言われたり」
進研ゼミなら基本から叩き込んでくれるしその教え方も見てみたくなった、という。
そんなわけで始めることになりそうだ。こういう風に釣れる魚がいるから怒涛のDM攻撃は止むことはないんだろうなあ…。
じゃ、そんなわけで寝ますか、と嫁を脱がそうとしたら無言でひっぱたかれた。僕にも
「しつこくてもう断る理由がなくなっちゃったからお願いします」
って言ってくれよう…。
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02月24日(金)
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