ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■幼稚園オールナイトロング。
夜、家に帰って来ると息子・タク(5才)がいなかった。
幼稚園の「お泊まり保育」である。男の子も女の子もひとつの教室に布団を敷いて寝るんだという。幼稚園児ならではのお楽しみであることよ。朝、出掛ける前に
「ママがいなくてもお泊まり大丈夫かい?」
と聞いてみたが「大丈夫!」と力強い答えであった。もっとも既に何度か僕の実家に娘・R(7才)と共に泊まった経験があるので、親がいない夜は初めてではない。そこは本当に大丈夫だろう。しかし
「タオルがなくて大丈夫かい?」
これにはタクも「うーん」となった。タクは未だにハンドタオルを持ち、口や鼻に当ててふんふんしないと心が落ち着かないという、喫煙者みたいな癖がある。僕ら家族の前では普通にふんふんしているが、自分でもあまり格好いいことではない、という自覚はあるのだろう、同級生の目がある幼稚園では絶対やらない。
僕と外を歩いている時でもタオル片手にふんふんしているが、道端で同級生に会ったりすると慌てて僕にタオルをぶん投げてくる。その姿を見られたくないらしい。だから当然お泊まり保育にもタオルは持って行かないはず。
吸いたくても吸えないという気持ちは僕にもよく分かる。タバコを吸いたくても吸える場所がない、おっぱいを吸いたくても吸える女体がない…親がいない寂しさよりもタオルを吸えない物足りなさの方がタクにとっては大きな問題となるだろう。
しかしタクは「うーん」としばらく考えた後
「わかった、タオルの代わりにパジャマのすそをふんふんする」
「こっそりふとんをふんふんする」
等対策を編み出しており、逞しくやっていけそうな感じであった。
そんな感じでタクは幼稚園に泊まりに行ってしまったので、今夜は僕と嫁と娘・R(7才)だけ。Rは
「おとまりいいなあ〜楽しかったな〜」
Rも幼稚園年長組時代に経験しているので、羨ましそうに、またちょっと寂しそうにしていたので
「パパと一緒に寝る?」
おいでおいでをしたら
「ねるー!」
と懐に飛び込んできた。愛いやつじゃ。ちこうよれ。
「そうやって一緒に寝るって懐かれるのも今のうち。そのうち…」
横から嫁が地獄からの囁き声のような低いウィスパーヴォイスで意地悪なことを言うので、ああそうか、さっきからなんとなく胸がチクチクしていたのは僕も寂しいからなのだと気付いた。
親がいなくてもお泊まりができるようになる。親から離れて行くようになる。そして親は残される。一番寂しいのは僕だった。
とどのとまり、いや、つまり、そういうことなのである。
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07月29日(金)
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