ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■メイク・ア・ウィッシュ
夜、仕事から帰って来ると例によって娘・R(7才)の書き置きが。
よく見ると手紙だけではなく細長い紙も付いている。
「これは、たなばたです。なりたいものとりゆうをかいてください。Rより」
成程、七夕か。細長い紙は短冊のつもりなのだ。なりたいものを書けと言われてもなあ…。この年でなりたいものとか言われても、もう人生は後戻りできないし、今更イケメンモデルになりたいとか書いても虚しいだけだ。むしろこの年からなろうと思ってなれるものってエロオヤジか枯れたオヤジぐらいの選択肢しかないし、成人病になりたくないとかハゲたくないとか臭くなりたくないとか、「なりたくない」ものの方が多い。
まだ未来がキラキラと輝いている子供達にはそれがわかりますまい…、とRがハサミで切った不格好な短冊を眺めながら悩んでいると、窓際に緑のカタマリを見つけた。
細長く切った緑の折り紙を束ねたもの。おそらくこれもRが作ったのだろう。笹の葉を作りたかったんだなってことが痛いほど分かるが、どう見てもワカメである。
そのワカメ、いや、笹の葉の中に既に括り付けられていた子供達の短冊があった。
「ピアニストになりたい R」
なれるといいけどなあ。音大なんて行かせる金あるんだろうか。一方
「サッカーせんしゅになりたい タク」
息子・タク(5才)はありがちな感じで。おおそうじゃ。タクがサッカー選手でボロ儲けして、Rを音大に行かせればよい、と思った僕は超ダメ親。あと何故か
「だいくさんになりたい タク」
というのもあった。どっちやねん。そして密かに嫁の短冊もあって
「お姫様になりたい。ドレスを着て王子様と暮らせるから」
と厚顔無恥なことが書かれていた。王子って誰やねん。ヒロノミーか。アヤノミーか。ハンケチか。その願い事は僕がすぐ叶えてやることが出来るだろう。パンツからお尻を半分出して、ハンケツ王子。なんちて。
嫁ほど能天気なことを書く気にもなれず、その日は寝てしまったら翌朝Rに催促された。
「パパおてがみ見た?ちゃんとなりたいもの書いてよ!"たなたば"なんだから!」
「Rー!2年生なんだから間違えるなー!」
そんなカワイイ言い間違いをする子供達といつまでも一緒に暮らしていたい、でも子供達の幸せな姿をいつまでも見ていたい、というのが本当の「なりたい」夢なんである。
しかしRの結婚式なんてやられた日にはどうなちゃうんだろうなあ。結婚式というのはよっぽど黒い事情とかがない限り人生で幸せの絶頂であるわけで、幸せの最高潮にあるRの姿を僕はどう受け止めるのか。
式の最後に親へのスピーチとかプレゼントとかあるけど、まともにいられないような気がする。
タナタバ贈呈。なんちて。
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06月29日(水)
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