ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■嫁の旗はスペシャルフラッグ。
「タクのことよろしく!」

朝、嫁が叫びながらあわただしく家を出て行った。

緑のおばさん当番らしい。ただでさえ忙しい朝なのに大変なことである。

僕と娘・R(7才)も間もなく会社と学校に出掛けるが、息子・タク(5才)は幼稚園に行くまでまだ時間がある。でもひとりで家に置いておくわけにはいかない…というわけで、タクも一緒に家を出て嫁が立ってる場所まで連れて来い、というわけで「タクのことよろしく」なのであった。

R達小学校登校組と一緒にタクを連れて歩く。

「ねえ見て見て〜。今日ぜんぶピンクなの〜」

「ほんとだーかわいいねー」

Rと一番仲良しの女の子が、ランドセルから服から靴から傘まで全部ピンク系統の色で、Rとキャイキャイじゃれ合っていた。

おっさんおばさんがピンクで統一しても林家ペーパーになるだけだが、子供だとカワイイ。

「ピンクサターンだね。ぎょへへへ」

僕はついオヤジギャグを言ってしまったが、平成フタケタ生まれのこの子達には分からないだろう。

さて、ピンクの女の子ならぬ緑のおばさんである。嫁はどこか…。いつも途中で別れる交差点を過ぎても、嫁が立っている場所がその先なのでまだ一緒に歩く。やがてR達は歩道橋を渡るのでそこで別れる。嫁はその先にいる。

「ママどこぉ〜?」

「もうちょっと先だから」

と先を急ごうとすると

「パパー!ばいばいー!」

歩道橋の上からでかいRの声がして嬉し恥ずかし朝通勤。やがて嫁が立っているという交差点の信号が見えてきた。

「あの辺にいると思うけど…」

と目を凝らすと、嫁の方が先に気付いたようで、旗をぶんぶん振り回していた。

「ママー!」

タクが全速力で走って行くと

「たくー!」

嫁が旗を全力で振り回して迎えていた。F-1かよ。なんであの親子は朝からテンションが高いんだ。

しかし緑のおばさんというのは、ヒマさえあれば一度やってみたいものである。ランドセルをカタカタと鳴らしたチマチマとした小学生が可愛く登校する姿を見ていると、なんだか頭の中がゆるまって癒されそうな気がして…。中には僕より背が高くて

「ういーっす」

みたいはゴツイ小学生もいるんだろうけど。やるとしたら怪しいオヤジに見られないよう、身なりをキチンとすべくピンクのVネックセーターとし、猫背にならずビシッと胸を張り、子供達に向けてきちんと

「とぅーす!」

と挨拶を…って

それは緑のおばさんではなくオドリのおっさんである。

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06月18日(土)
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