ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■気は優しくて、カバン持ち。
朝、会社に行く時に息子・タク(5才)も一緒に家から出て来た。
いつもではないが、早く支度を終えた時は僕と娘を見送ってくれる。その時は必ず
「ぬおおおおおお!」
意味もなく走り出しとっとと僕らを追い抜いて、最初の曲がり角で止まるのである。止まるとはいえ曲がり角から車や自転車が出てくることもあるし、
「走るな!」
といつも怒鳴っているのだが、それで聞くようなタクではない。
集団登校するみんなが集まるまでしばし戯れる。今朝は
「パパ、カバン持ってあげるよ」
僕のカバンを持ってくれるというので渡してやった。弁当箱ぐらいしか入っていないのでそんなに重くはない。タクは得意気に手に持って歩く。
「じゃ、そろそろ行こうか」
いつも一緒に行く面子が揃うと、
「いってきまーす」
嫁などへ声をかけて道路を歩き出す。
「きょうはカバンを持って走るよ!」
とタクが得意気に言う。親としては止めるべきだったのだが
「えーできんのー?」
と、逆にけしかけてしまった。
「ぬおおおおおおお!」
タクは走る走る。いつもと変わらないぐらいのチョロQのような颯爽とした走りを見せ、そしてその勢いを保ったまま…
転んだ。
そりゃもう「ぽてちん」と擬音が聞こえてきそうな、あっさりした前のめりゴケ。
「ぶわああああああ!」
僕、タクの絶叫とほぼ同時にダッシュ。そして起こし上げると膝はすりむいていない…。しかし、小指の爪大ぐらいの手のひらの皮が剥けていた。
「これぐらい大丈夫だ!」
と励ましたのだが
「いたいよおー!パパがカバン持って走れって言うからだよお!」
タク、泣きながらブチ切れ。なんと、僕のせいにされてしまった。
「えええええ〜?」
と驚いていたら
「はいはいはいはい、いいからこっちいらっしゃい!」
「うわああん、ママー!」
こぼれ球を拾うラガーマンの如く、嫁が素晴らしい走りでタクを拾い上げ、とっととウチに戻って行ってしまった。騒がしい母子がいなくなって静かになり、ぽつんと残されたのは僕と、他の子供達と
「パパのせいにされちゃったね」
きゅきゅきゅ…と野口さんのような意地悪い笑い顔を浮かべるR。
「さ、遅れるから行こうか…」
「たっくんすごい怒ってたねー」
「自分のせいだっつの」
僕らは再び通勤通学の道を急いだのであった。
タクは僕のカバン持ちに失敗したので癇癪持ちになってしまった、というお話でしたとさ。
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04月21日(木)
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