ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■単一求めて単一行動
娘・R(7才)と息子・タク(5才)はピアノを習っている。

しかし貧乏長屋住まいなので家にピアノなんか置けるわけない。ほとんどおもちゃと言ってもよいキーボードで練習している。そのせいで特にタクなんかは鍵盤のタッチが弱過ぎて、セクハラオヤジが

「肩凝ってないかチミ〜」

とソフトタッチするみたいな何となくエロい手つきになっているので、本物のピアノを弾いてみると蚊の泣くような音である。

そんなタクが今日もキーボードで練習している最中、僕がその横を通り過ぎようとしたところ

「キーック!」

練習に飽きたタクにいきなりケリを入れられたので、よろけて電源コードに足を引っ掛けてしまった。

「こら!練習中にふざけるな!ちゃんとやれ!あと親を蹴るヤツがあるか!」

タクを叱り練習を続けろと命じたのだが、キーボードの音が出なくなってしまった。

「あーあ…きっと断線してしまったに違いない…」

専用の電源コードは取り寄せないと手に入らないだろう。少なくとも何日かはかかる。その間は電池を入れてやるしかない。

「電池何個いるんだっけ…」

キーボードを裏返して電池が入るところを調べてみたら、

「ひいいいいい!単一が6本も!今時どこにも売ってないぞ!」

よりによってこのご時世に単一!しかも6本!震災以来電気店やコンビニの電池コーナーがカラになっているのをよく見かけた。あまりにも電池の在庫がないので

「単三ありますか?」

店員に問い合わせてみたら

「キリンレモンでよろしければ」

と言われたほどである。(これはウソだが)

「でも最近は見かけるようになったよ」

という嫁の言葉を信じて何軒かドラッグストアやコンビニを回ってみたが、やはりダメ。スッカラカンのところ、単二単三はボチボチあるところ、在庫は店によって違ったが単一はどこにもなかった。

「あーあ、コレじゃ練習できないぞ!ふざけちゃ行けない時にふざけるからこうなる!」

改めてタクを叱るとぶあああああと泣き出した。でもタクは反省して泣いているのではなく、単に叱られて悲しいから泣いてるだけなんだよなあ…。その証拠に5分後にはまたいつものお調子者に戻っている。

ただ家で練習出来ないと話にならないし、Rもとばっちりを食ってしまい可哀想である。

「こうなったらローラー作戦しかないな!」

そう思った時はもう夜中になってしまっていたが、近場のコンビニを当たりまくった。何軒めかでようやく単一を発見!しかし

「おひとりさま2個まで」

の貼り紙が。

「これこれこういうわけで、どうしても6個必要なんですが…」

と店員に泣きついたが

「入ってもすぐなくなってしまうんで…」

「ですよねー…」

もっと深刻な状況の中で本当に必要としている人がいるはずである。それに比べたらウチの優先順位など下位の下位だろう。とりあえず2個買って、あと集めなければならないのは4個である…ってドラゴンボールじゃねえんだぞ!

結局それから5軒目ぐらいの店でまた在庫を発見し、ようやく6個揃えることが出来た。これは運が良かったのだろうか。しかしこんな状況じゃなきゃコンビニなんかで電池なぞ買わない。高いから。タクのケリ一発。高くついたなあ…。お年玉から徴収してやろうかしらん。

ウチに帰って来ると嫁はとっとと寝ていた。この苦労を聞いて欲しかったのに!

そして僕のプラス極と嫁のマイナス極をくっつけたかったのに!

愛の直列繋ぎ。なんつって。

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04月07日(木)
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