ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■夢見るオヤジの底力。うけてみなさい。
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真夜中に目が覚めた。
一体何時だろうか、と腕時計を見ようとしたら腕が動かない。娘・R(7才)が絡み付いていたのだ。フフフ…まったく甘えん坊なのだから。以前嫁に
「あなた、寝てる時いつもRに抱き付いているのよ」
と言われ
「娘に抱き付いて寝るオヤジきもっ」
我ながら自分の寝相に嫌気が差したものだが、やはりRから抱き付いているではないか…などと寝惚けた頭でうつらうつらと考えながらRの寝顔を眺めていたら、ぱちりと目が開いた。暗闇でも分かるキラキラした瞳がチラチラと動き
「あれ…君も起きちゃったのかい」
と声をかけるとパチクリと僕に視線を合わせ、自分以外にも僕が起きていることにホッとしたのか、にこーっと、何とも言えない安堵した笑顔を見せた。
真夜中に目を覚ますこと自体あまりないのに、ふたり同時に目を覚ますなんてなんという奇跡だろう。やっぱり僕ら親子は何かしらシンクロしているのだなあ、と感動した。
決して僕が起きて物音を立てたから、とか、Rが絡み付いている腕を動かしたから起きてしまった、等の野暮な原因究明はしない。寝惚けていたので。そして寝惚けついでに
僕ちんは今まで生きてきてこんなに
Rと繋がっていることを感じたことはなかった。
本当にRは僕ちんのことを愛していたんだね。
ひとつなんだねバイブレーション。
というヒロポンのような気持ち悪いポエミング(ポエムを作ること)をしながら
「まだ暗いから寝ようね」
「うん」
「このままずっといたいよな気もするけれど、明けない夜はないのだ」
「うん」
ポエミリティ(ポエムっぽさ)の高いセリフを口走りながら再び寝直した。おそらくすぐ寝てしまったものと思われる。気が付いたら朝だった。
「夜は一緒に目が覚めちゃったね〜」
Rを起こす時にそう声を掛けてみると
「さめてないよ」
ええーっ。
「昨日、パパと一緒に目が覚めてちょっとお話ししたじゃん。覚えてない?」
「おぼえてない」
ええーっ。
Rはとっとと忘れていた。僕にとってはちょっと素敵な出来事だったのに、それをRはとっとと忘れていた。
こうしてオヤジと過ごした幼年期なぞ殆ど忘れてしまうんだろうなあ。だから僕はこうして落ち穂を拾うが如く自分の記憶を記録しているのである。それこそ目が覚めると急速に忘れていく夢の尻尾を慌てて捕まえるかのように。そう。夢見るだけじゃいけないのである。
すなわち、夢見るオヤジじゃいられな〜い。
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09月09日(木)
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