ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■涙が落ちる夜に
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真夜中、ヘッドフォンにて、主に

「ああん、ああん」

という類の喘ぎ声が聞こえてくるビデオを鑑賞していたところ、

「うわあああ…うわああああ…」

悩ましい喘ぎ声に重なって、呻き声が聞こえてきた。ウギャアアアアア。これはアレだ。心霊ビデオだ。昔よく曲に霊の声が入ってるってのがあった。ちょうど岩崎ひろみの「万華鏡」にはしゃがれた呻き声のようなものが聞こえてきたが、まさにそれに近い。うわあああ、おっかねええ!と思ってヘッドホンを外したら

「うわあああん!うわああん!」

よく聞いたら娘・R(5才)の泣き声だった。隣の寝室に飛び込むとRが寝床でわあわあ泣いているではないか。

「よしよし。大丈夫だよ〜」

抱き締めて背中をさすってやると、徐々に落ち着いてきた。涙がポロポロこぼれているのでそっと拭いてやる。おお、なんという可憐な娘よ。真珠の涙を浮かべたらオヤジなんてイチコロなのよねん。

「どうした?怖い夢見ちゃったか?」

と尋ねると首を横に振る。違うらしい。なんだろ。Rはまだ頭が半分寝ているようで、目を見開いて宙の一点を見つめていた。その視線の先に何か…。

もしかして幽霊とかオカルティックでスピリチュアルな感じなものを見ちゃった?ぎゃあああああ怖いいいい!Rの視線を恐る恐る追ってみた。今この暗闇の部屋の中に美輪明宏の顔が浮かんできたら、僕も本気で泣くが。

幸いなことに人の顔と呼べるものは嫁と息子・タク(3才)のマヌケ寝顔のみだったので一応安心した。

「そうか、目が覚めちゃったら真っ暗だしみんな寝てるし僕いないし、で怖くなっちゃったんだね」

と言うとRはコクリと頷いた。僕にも覚えがあるなあ…。小さい頃、なにかの拍子で目が覚めてしまう。まわりは真っ暗。いつも起きてるところしか見たことがない両親すら寝ている。自分だけ普段の世界から切り離された異界に放り込まれたようで、本当に怖かった。

Rもあの怖さを味わってしまったんだな。それなのにみだらなビデオとか観ててゴメンよ。でも許して欲しい。まさか君達が起きてる時に観るわけにはいかないから…。

「パパが横にいるからな。安心してお休み」

と言うとRは目をつぶり、再び眠りの世界に落ちていった。僕の手をぎゅっと握ったまま…。ようやく闇の怖さから逃れられたようだが、ゴメン。

本当に恐ろしいのは、Rが握っている僕の手。

ついさっきまでちんこいじってたんだけど…。

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07月04日(土)
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