ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10025369hit]

■伝説の編集者・見城徹の「ベストセラーを生み出すための四つの必要条件」
『編集者という病い』(見城徹著・太田出版)より。

(「伝説の編集者」(現・幻冬舎社長)見城徹さんの新米編集者時代のエピソード)

【三十数年前のこと、新卒として入社した慶済堂出版の一年目に、『公文式算数の秘密』という当時の大ベストセラーを企画編集しました。リライトも自分でやりました。その本のことを考える度に、それが編集者一年目の本であるとともに、自分の原点たる内容をもっていることに我ながらびっくりしています。それは偶然かもしれませんが、実は僕のその後の道筋を定めるような内容であったのです。
 就職一年目のある昼下がり、ガールフレンドと新宿御苑の前を歩いているときに、正門前に白鳥ビルという雑居ビルがあり、そこの確か奇数階のフロアーに「公文式算数研究会」という看板があるのに気付きました。その時は「クモン」と読めず、「何だろう、このコウブン算数というのは」と思いました。それから二週間ほどして、新聞の小さな広告に「公文式算数教室指導者募集」とあるのを発見し、白鳥ビルの研究会は独自のノウハウがあり、教室で生徒に教えるフランチャイズの塾を運営しているのだと理解しました。
 僕はつねづね、売れるコンテンツ(本であれテレビ番組であれ何であれ)は四つの要素を備えている、その必要条件を満たすものは必ずヒットすると思っています。
 (1)オリジナリティがあること。
 (2)明解であること。
 (3)極端であること。
 (4)癒着があること。
 これは長い編集者としての経験から僕が勝手に結論付けた原則ですが、いま考えてみれば『公文式算数の秘密』は、その四条件を見事にすべて満たしているものでした。公文式はそのビジネスモデルがオリジナリティに富み、計算を続けるだけという極端な方法、そして誰がどこから見ても分かりやすい明解なノウハウでした。さらに僕が考えたのは、教室があるのなら生徒がいてその父兄がいるはずだから、販売ルートを兼ねた組織ではないか、ということでした。3万部くらい買い取ってもらえないか、父兄に書店で購入してもらえないか、そうすればベストセラー欄に顔を出し、売れ行きに弾みがつくと目論んだのです。それが「(4)癒着」の内容です。
 編集一年目にほぼ初めて作った本に四条件がすべて入っていて、結果、ものの見事に30万部を超える大ベストセラーになった。これは自分で言うのも変ですが、もの凄い始まりだったと思います。売れなければ満足できない。そんな病理を僕は編集処女作から持ってしまったのでした。
 そのヒットによって、当時5万人ほどだった公文式算数の会員がまたたくうちに激増し、本部の電話は鳴り止まず、あっという間に急成長して、白鳥ビルから新宿西口の大きな明宝ビルに移り、さらに三井ビルへ、やがて市谷に自社ビルを建てることになります。年商6億円を超える押しも押されぬ教育産業の大手に飛躍するわけです。
 デートで歩いていて、たまたま見つけたビルの小看板が、ベストセラーを生み、公文式の大飛躍をもたらし、その後の僕の運命を決めた。こじつけかもしれないが、そういう始まりであったのです。既にして白鳥ビル時代の公文の首脳陣はほとんど鬼籍の人になってしまいましたが、飛び込み営業マンのようにして「本を出しませんか」と前のめりになって説得をした自分、ノウハウ本の出版などつゆ考えたこともなく不得要領でポカンとした彼らの様子を、まさしくオンリー・イエスタディとして思い出します。】

〜〜〜〜〜〜〜

 角川書店で編集者として数々のベストセラーを生み出したのち、自ら幻冬舎を設立して「創業後13年間で13冊のミリオンセラーを刊行した」という、「伝説の編集者」の編集者一年目の話です。この『公文式算数の秘密』というベストセラーが生まれたときのエピソードを読むと「栴檀は双葉より芳し」なんて言葉を、つい思い出してしまいます。社会人一年目なんて、大部分の人は、「まだまだ勉強のための期間だから」というような気持ちでいるのではないかと思うのですが、見城さんは、その時期から既に「売れるコンテンツ」をデートしながらも探していたのですから。そして、その「ビルの小看板」は、ずっとそこにあって多くの人が目にしていたもののはずなのに。


[5]続きを読む

04月02日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る