ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■『タクティクスオウガ』の「カオス」から抜けられない女
米光:結局はもっと冷めた人だと、「こっちをみたいから」っていうことで意に沿わない選択だってするわけだものね。

ブルボン:でも、『ドラクエ5』とかでも、たいていの人はビアンカと結婚したって聞くよ。ストーリー上の必然としてフローラは選べないよ、ということらしい。みんな人情があってさ(笑)、よっぽどの天邪鬼じゃないかぎりビアンカを選ぶらしいんですよね。

米光:それは実際にその本人に人情があるかとは別かもしれないけどね。人情がある世界という規範のなかで役を演じているのかも。

飯田和敏:たしかに『ドラクエ5』ではビアンカと結婚する人も、私生活でどうかはわからない。物語だからこそ、ってところは勿論あるだろうし。

ブルボン:まあ単純化されてるわけだしね。いずれにせよ、中世とかファンタジーを舞台にしたものに限らず、RPGってとにかく、ゲーム内の他のジャンルと比べてもなんとなく血気盛んなほうに感情移入しやすい媒体なのかもしれないね。たしかに『スーパーマリオ』をやって「おのれクッパ!!」みたいな感じにはならないもんね。】

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 これを読んでいて、僕は名久井さんにものすごく共感してしまいました。
 みんなそんなに「爆笑」するなんて失礼な!
 『タクティクス・オウガ』は、僕も大好きなゲームなのですけど、僕も「カオス」でなんとかクリアしたあと、他のルートが気になりながらもあの大作を「選択」の場面からやり直す時間も気力もないまま、かなりの歳月が経ってしまいました。
 でも、もう一度やったとしても、たぶん僕も「カオス」を選んじゃうんじゃないかと思います。「他のルートを見てみるためにやってみた」としても、あの場面で「ロウ」に行ったら後悔しそう。

 『ドラゴンクエスト5』も、スーパーファミコン、プレステ2、ニンテンドーDSと3機種でクリアしたのですが、全部ビアンカと結婚したものなあ。僕だって、「フローラのほうが呪文強いじゃん」と言い放ち、あっさりフローラと結婚してしまう妻の合理性を見習いたいと思うのです。
 でも、ストーリーを進めていって、結婚前夜に「すやすやと眠っているフローラ」と「眠れずに窓の外を眺めつつ、『私のことは心配しないで。フローラさんを選んだほうがいいよ』と気遣ってくれるビアンカ」を目の前にすると、「ここは人間としてビアンカだろ!」という気持ちになってしまいます。「フローラ(あるいはデボラ)を選ぶつもりだった人」でさえ、あの場でビアンカを捨てるのはなかなか難しいはず。

 そういえば、堀井さんも、なにかのインタビューで「基本的にはビアンカを選ぶように作っている」と話していました。
 たとえそれがデキレースであったとしても、「ただビアンカと結婚する」というのではなく、「いろんな意味で魅力的なフローラの誘惑を断ってビアンカを選ぶ」からこそ、プレイヤーの思い入れも強くなるのでしょう。

 たしかに、「人間としてビアンカを選ぶしかない!」とプレイヤーに思わせることができたとしたら、「作者の勝ち」ですよねこれは。

 でも、『タクティクスオウガ』の「あの場面」にしても、『ドラゴンクエスト5』の「ビアンカとフローラ」にしても、もし同じことが現実に目の前で起こったら、「ロウ」に行く選択をしたり、フローラと結婚したりする人は、少なくともゲーム内での「選択率」よりははるかに高いのではないかと思います。
 だからこそ、ゲームのなかだけでも、「人間として正しい選択」をすることにこだわってしまう面もあるのかもしれませんね。

 僕は毎回、ビアンカを選ぶたびに、「もし僕が人生やり直せるとしても、結局同じことしかできないんだろうな……」と、自分の不器用さが悲しくなってしまうのです。

04月13日(月)
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