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活字中毒R。
by じっぽ
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■『本の雑誌』の危機
 あの頃は、『本の雑誌』の他には「面白い本をまとめて紹介してくれる雑誌」を知らなかったので、読むたびに欲しい本が増えていきました。
 まあ、「マニアックすぎてよくわからない書評」も多かったし、読みたい本でも、翻訳書やマイナーな作家の本などは、読みたくても僕の地元ではなかなか手に入らなかったのですが。

 それから20年近く、僕と『本の雑誌』とは、「ときどき顔を合わせては世間話をする昔からの友達」のような関係をキープしてきました。
 『本の雑誌』ほど見かけよりもコストパフォーマンスが高い本はなかなか無いとは思うのだけど、今でもやはり、『本の雑誌』を置いている書店というのはそんなに多くはないんですよね。僕が住んでいる人口数万人程度の地方都市ではなおさら。

 その間、『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)が「本を紹介するお洒落な本」として成功をおさめた一方で、『ダ・カーポ』は「本を紹介する雑誌への転換」を図ろうとしたもののうまくいかず、休刊に追い込まれてしまいました。
 同じ「本を紹介する雑誌」でも、『本の雑誌』が、「初版ですぐに絶版になるような本を1万部売ろうとしている雑誌」だとすれば、『ダ・ヴィンチ』は、「もともと10万部売れそうな本を20万部売ろうとしている雑誌」であり、この両者は異なる「書評誌」だと思っています。
 でも僕は、コンビニで買える『ダ・ヴィンチ』は毎号欠かさずに買っていても、車で1時間かけて、混んでいるショッピングセンターのなかの紀伊国屋に行かないと買えない『本の雑誌』からは、少しずつ疎遠になってしまっていたのです。「毎年1月号の『今年のベスト10』は忘れずに買うけど、あとは偶然書店で見つけたら買うかもしれない」という程度の付き合い。

 正直、『本屋大賞』は、いまや「直木賞に次ぐ『受賞作が売れる文学賞』」になっていますし、『本の雑誌』がそんな状況になっているなんて、思ってもみなかった、というのが僕の実感です。みんなが「自分が読まなくても、どうせ固定ファンが変わらず買い続けているだろう」と楽観しているうちに、いつのまにか斜陽になってしまったのでしょうか。

 『本の雑誌』の危機の原因というのは、インターネットで気軽にさまざまな「書評」を読めるようになったこともあるでしょうし、『ダ・ヴィンチ』の影響もあるかもしれません。
 そして、必ずしも「読者離れ」だけではなく、「すべての出版物において、特例を除き書店からの返品を受けない、完全買切制をとっている」という点にもあると思うんですよ。コンビニに並べて売れる本かどうかは微妙ですが、もっと一般の書店で買えるようになっていたら、もう少し売れていたかもしれません。あるいは、この不景気で、大型書店でも、「完全買切制」を敬遠するようになったのか……

 椎名さんも、もう還暦を過ぎておられますし(外見はものすごく若々しいのですが)、雑誌というのが「永遠に続く」ものではないかぎり、いつかは「終わり」が来るのは必然のことです。
 でも、僕は「憧れの人たちがつくった、憧れの本」である『本の雑誌』がこんな苦境に陥っているというのは、やっぱり寂しいし、できるだけの応援はしたいのです。
 椎名さんも浜本さんも「這いつくばってでも」という言葉を使っておられるのは、『本の雑誌』が現在置かれている状況の厳しさをあらわしているのでしょう。そして、ふたりの決意の強さも。
 椎名さんは作家として十分にひとり立ちしておられるので、「もう古い殻は捨てる」という選択肢もあるはずなのに。

 「潰れそうになったから応援する」というのは、ちょっとみっともないのは百も承知なのですが、それでも、僕は『本の雑誌』を続けてもらいたいし、そのためにここでささやかながらエールをおくらせていただきます。雑誌が続くかぎり、月1冊ずつですが、買い続けていくつもりです。
 ネットでいろんな人の書評が読める時代だからこそ、「プロの書評」には価値があると思うのですが……

12月16日(火)
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