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活字中毒R。
by じっぽ
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■浦沢直樹さんが語る、「三谷幸喜さんと僕の共通のこだわり」
『QJ(クイック・ジャパン)・vol.81』(太田出版)の「総力特集『漫画の底力』」の「1,5000字インタビュー・浦沢直樹」より。取材・文は吉留大貴さん。
【インタビュアー:浦沢先生は漫画というものに対してどこか客観的な視点を持って接しているように感じます。
浦沢直樹:もともと漫画家になりたかったわけではないですからね。就職活動で小学館を受けて、面接のときについでに原稿を持って行ったら、たまたまの流れで漫画家になっちゃったっていうのが僕のキャリアのスタートですから。でも貧乏はしたくないし(笑)、とりあえず食ってかなきゃいけないし、かといって魂も売りたくない。そうなると職業としてどこで帳尻を合わせるかを考えるじゃないですか。そりゃ初めて印刷物になって雑誌に載ったときも嬉しくなかったと言えば嘘になるけど、「憧れが実現した!」という感じは正直なかったですね。……手塚治虫先生の『陽だまりの樹』と隣り合わせで自分の漫画が載ったときは、さすがに「すごい!」と思ったけど。
僕の場合、単に絵が上手く描けちゃっただけなんです。嫌味に聞こえるかもしれないけど。だから漫画を生業にする際に、「絵が描けることをツールとしてどう使おうか」って考えながら、今までやってきた感じなんですね。
インタビュアー:キャリアの最初から”プロデューサー・浦沢直樹”という視点を持っていたということ?
浦沢:そういう感じが近いでしょうね。絵に関しては子供のころから異常に敏感だったし。例えば小学生のとき、アニメの『巨人の星』を見てると、4、5チームで作画しているのが分かっちゃうんですよ。それで、「ローテーション的に考えると来週はあのチームが作画だな。来週は良い場面だけどあのチームで大丈夫かな?」とか心配するような、イヤな子供だった(笑)。他にも『侍ジャイアンツ』と『アルプスの少女ハイジ』は同じアニメーターが描いてるってパッと見ただけで分かって。「別々のアニメーション会社で作っているのに、なんで同じ人たちが描いているのか、子供のころ気になってしかたなかった」とスタジオ・ジブリの鈴木敏夫さんにこの間お会いしたときに話したら驚いてました。まあ、そうやってクレジットを見たり調べたりしているうちに、宮崎駿・高畑勲・大塚康生という名前や、荒木伸吾という優れたアニメーターを、知らず知らずに覚えていったりもして。
インタビュアー:ちなみに、浦沢先生の考える漫画原作のアニメの最高傑作って何ですか?
浦沢:漫画をアニメ化ね……難しいけど……。『ど根性ガエル』とか好きでしたね。キャラといい、背景といい。あとやっぱり『ルパン3世』だな。あの爆発シーンは革命的だった。
(中略)
インタビュアー:時代を飾るアイテムを順列組み合わせにするのではなく、自分なりに組み替えることで、単なる嘘とは異なる仕掛け=トラップができる。このトラップの設定の巧さが、浦沢作品の根底を支えている気がします。
浦沢:もっと単純に、際どく言ってしまうと、僕には「男子の精通が始まっていない/始まっている」というラインがあるんじゃないかな。中学を起点にしてしまうと、どうしてもセクシャルな気持ち悪さが出てくるんですね。それが僕の生理に合わないんだと思います。
インタビュアー:例えば、あだち充さんのように、高校生を主人公にしても極端なまでに現実のセクシャルな要素を排除する作家もいますよね。でも、あそこまでそぎ落としてしまうと、逆に「性の不在」が強調されてくる。一方、浦沢先生は同じく高校生が主人公の『Happy!』ではある程度セックスを描いているし、『20世紀少年』では、ポルノ映画のポスターや平凡パンチといった具体的なアイテムを使って、少年なりの性的な部分を描いている。つまり、作家が設定したボーダーラインが目立ちにくいんですね。
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12月20日(土)
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