ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■『ハチワンダイバー』の作者に「引導を渡した」プロ棋士
柴田:僕から鈴木八段に「こういう流れで、この戦法を使って逆転勝ちするように作ってください」っていう感じでざっくりお伝えすると、途中の棋譜も含めて作っていただけるんですよ。その棋譜が実に感動的で、これをどうやって伝えようかと日々考えています。

インタビュアー:それはプレッシャーですね。

柴田:ええ。対局場面にこりすぎると、将棋を知らない読者がついていけなくなってしまうし。

担当:いつもそこで紛糾してますね。「NHKの将棋中継じゃないんですから!」って(笑)。

柴田:でも、本当に将棋の好きな人は、対局自体にワクワクもするから、小さな画面でも、しっかり持ち駒まで描いています。もし時間あって、そこで考えてもらえれば、それなりのものがわかるようにはしてあります。】

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 現在『週刊ヤングジャンプ(集英社)連載中の『ハチワンダイバー』、この本のランキング(オトコ版)でも見事1位に輝いており、まさに絶好調、という感じです。
 僕はこのインタビューで、作者の柴田ヨクサルさんが、子供時代に真剣に棋士を目指していたというのをはじめて知りました。ある有名な棋士が「私はこうして棋士になれたけど、兄は私より頭が悪かったから東大に行った」と言ったという伝説があるのですが、プロ棋士の世界というのは、まさに「選ばれた天才中の天才」たちがしのぎを削る厳しい世界なのです。

 柴田さんは1972年生まれですから、僕とほぼ同世代。「ファミコン直撃世代」にもかかわらず、柴田さんが、「最終的にファミコンに転ばずに将棋を選んだ」というのは、「よっぽど将棋が好きだったんだなあ」という気がします。当時は、僕も含め、多くの子供たちがファミコンをはじめとするテレビゲームに転んで、人生を誤ったり、人生の目標を変えてしまったり(ゲームデザイナーになる!とか、「ナムコに就職する!」とか叫んだり)していましたから。

 そんな柴田さんが、「プロ棋士になる夢を諦めた対局の話」には、僕も絶句してしまいました。「二枚落ち」ということは、相手には飛車と角が無いわけです。いくら当時の柴田さんがまだ子供で、相手はプロ棋士、しかも九段とはいえ、この条件で勝てなければ「才能が無い」と言われるのも仕方ないのかもしれません。でも、今までずっとプロ棋士になることを人生の目標としていた子供に、たった一度の勝負で「引導」を渡してしまうのは、あまりに残酷ではないかとも思うんですよね。
 プロ棋士の世界は、一部に「負けたら終わり」のトーナメント方式の大会もありますが、多くはリーグ戦であり、「負けなしの連勝」ができなくても、安定して8勝2敗、7勝3敗を続けられればかなり立派な成績なのです。あの羽生善治さんですら、2006年度(2006年4月〜2007年3月)における、タイトル戦などの公式戦では34勝17敗の勝率67%。逆に言えば、「羽生さんでもタイトルがかかった勝負で強い棋士を相手にすれば、3回に1回は負ける」世界です(ただし、ランクが下のほうになるほど、勝ち続けないとなかなか上には行けないのも事実なのですが)。
 たとえば、10局くらい指してみて、「やっぱりダメだ」というのなら話はわからなくもないのですが、たった一度の勝負で「これじゃ通用しない」と言い切るなんて……

 プロ棋士というのは、本当にそれだけで「わかる」ものなのかなあ……いや、結果的には、柴田さんはマンガ家として成功することができ、こうしてまた将棋について笑って語れるようになったから良いものの、子供時代にこういう形で挫折してしまったら、二度と立ち直れなくなる人もいるのではないかという気もします。
ただ、確かに「才能の無さを見切ることができるのなら、早いほうがいい」のも事実なんですよね。

【満21歳(2002年度以前の奨励会試験合格者においては満23歳)の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに四段に昇段できなかった者は退会となる。ただし三段リーグで勝ち越しを続ければ満29歳を迎えるリーグ終了まで延長して在籍できる】


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12月16日(日)
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