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活字中毒R。
by じっぽ
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■「芸能界で一番緊張する芸人」江頭2:50
『hon-nin・vol.05』(太田出版)より。
(吉田豪さんのインタビュー記事「hon-nin列伝・第六回」の一部です。ゲストは江頭2:50さん)
【吉田豪:それで大川興業に入ってから、江頭さんの中では将来どうなりたいっていう目標はあったんですか?
江頭2:50:う〜ん……たとえば大川総裁が田中角栄邸に突撃する話とかが大好きでしたから、やっぱりそういうのになりたいって思ってましたね。
吉田:その方向性だと、テレビにはまず出られないという危惧とかもなく。
江頭:ああ、まったく全然テレビとか気にしてなかったですね(キッパリ)。だって、大川興業って、たとえば小田急の向ヶ丘遊園で営業やるじゃないですか。普通だったらステージでネタだけやればいいのに、違うんですよ。目の前のお客さんじゃなくて、「関係ない遠くの人たちを笑わせてこい」とか振られて。俺、走りながら考えましたよ。そしたら、そこにちょうどジェットコースターがあるから、ジェットコースターに乗って、そこで「ドーンと鳴った花火が…………」ってやったり。ステージで聞くとドップラー効果みたいになって笑うんですよ(笑)。あと、すっごい向こうのモノレールに乗って、「ドーンとなった花火が……」って。やっぱりステージからは小さ〜く見えるんですよ。モノレールの中では完全にキチガイが来た! って感じで。もう、そんなのばっかりでしたね。
吉田:追い込まれて何をするか、みたいな状態になってたわけですかね。
江頭:うん! あと横浜博でも、営業は台風で中止なのに、「あそこにいるイラン人たちを笑わせてこい」とか言われて。中止なのに、そんなことまでする必要ないじゃないですか! で、関係ないイラン人の客の前で「ア―――――ッ! ドンドンドーン」とかやって。イラン人、怒ってんのに。
吉田:ダハハハハ! その原点が、いまでも続いてる気がしますよね。
江頭:絶対にそれはあります。
吉田:効率の悪い笑いっていうか、やらなくてもいいことをやるっていう。
江頭:だから……ステージはどうでもいいから、とにかくどういう凶器を使ってもいいから笑わせるってことを、ものすごく学びました。向ヶ丘遊園のときも、その次に出番の芸人が、「こんなあとやれねえぞ! 草木も生えてねえよ」って言ってて。
吉田:そんなことばかりやってると、対応力ができて強くなりますよね。
江頭:メチャクチャ強くなります! いまもそれあると思いますよ、『「ぷっ」すま』に出てても。ディレクターの髪の毛を引っ張ろうが、カメラマンを蹴飛ばそうが、とにかく笑いに持っていかなきゃって。ウンコしててもいいけど、とにかく笑わせないとっていうのはあります、僕の中では。
吉田:でも、テレビでウンコしたって放送はできないわけじゃないですか。
江頭:1回放送しましたよ。テレ東の『少年バット』って番組で。ある文化人に「お前、ホモだろ!」って言って、「お前なんかこれだ!」ってウンコしたらモザイク入りで流れて(笑)。
吉田:そこまでやるのは責任感なんですかね。そんな責任感じなくてもいいのに、もっと軽く流してもいいのにっていう。
江頭:ああ、そうかもしれないです。僕は正直な話、芸能界で一番緊張するタイプで、これは間違いないです。
吉田:本番前には毎回手が震えるし。
江頭:……そうです。スケジュール切られた瞬間からプレッシャーで眠れないです。もう前の日とか寝ないで、ノートにシミュレーションとかいっぱい書きます。使わないんですけどね。それぐらい押し潰されそうになります。でも、上の芸人さんから聞いた話だと「緊張しない人間はダメだ」、と。それが正解だと僕は思ってます。
吉田:江頭さんに関しては絶対に正解だと思いますね。だからこそギリギリの表現になってるし、命を懸けてやってる感じが透けて見えますもん。
江頭:あ、そうですか(笑)。……正直な話、テレビでウケなかったときは自殺しようかなと思います(あっさりと)。このコンクリートにぶち当たって死のうって。もうダメなんですよね、手を抜こうと思っても。
吉田:どうにも手を抜きようがない。
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12月17日(月)
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