ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■6792,映画評 〜『ジョーカー』
   * 気持ち悪くて正視できなかったが、そこが面白い!
 バッドマンの悪役ジョーカーの由来を演じたドラマで、内容は暗い。
決して軽くない精神疾患を抱えも何とか生きてきた大道芸人だった男が、
ある時、爆発する。精神疾患?の映画といえば、明るく切ない内容
「フォレスト・ガンプ 一期一会」がある。長い人生の中で誰もが
精神的に傷つき、それを乗越えてきた。真面に生きるほど、それは深い。
身近に、その事例を多く見るが… 因縁が悪い方向に逆回転すると、
それは駄馬も駿馬に変わる。その時節は、早々に倒れて、時が過ぎ去るのを
待てばよいものを…  見ていて、何かしら、内なる暗いエネルギーが頭を
もたげてきそうな感覚になりげそうな。この映画の暗さに、途中で席を立ち
たくなったが、此処は踏ん張りどこと、堪えていたら、そこが狙い何処の
ようで、次々と、殺戮が始まって、狂った主人公の世界に引きづりこまれて
いった。成るほど、これは面白い!と、思わせてくれた。このピエロ殺人に
下層階級が、ジョーカーを英雄視し、喝さいするところが観客の一員として、
何とか慰めてくれる。 見ようかどうか迷った末に見たが、導入1時間は、
きついとしても、見るべき映画。もしかして『アカデミー賞』が貰えるかも? 
 それだけの力作を感じとれた。         評価は、90点。

   〜あらすじ〜
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも
笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。
ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの
住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。 そして、笑いのある人生は
素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。

 * 「ジョーカー」正義への称賛を拒絶させる、
              悲哀を極めた悪への到達
ダース・ベイダーに悪感情も恨みもないが、自分はヒール(悪役)の起源を描いた
映画を、あまり好ましいものとは思っていない。かって優しく純粋だった人物が、
自己犠牲のすえにやまれず暗黒面へと身を寄せる。そんな綺麗ごとによって
正当化される悪に、はたして説得力などあるのだろうか?

 ヒーローコミックス「バットマン」の宿敵として登場するジョーカーは、
廃液の満ちたタンクに落下し、異貌となった形相が本性を肥大化させ、世界で
最も知られるヴィランの一人となった。だが彼の出自を再定義する本作は、
そんな固定されたジョーカー伝説とは異質のコースをたどる。心を病み、
それでも人々に笑いを提供する貧しい大道芸人が、社会からの孤立や資本主義
がもたらす貧富格差といった膿汁で肺を満たされ、呼吸困難からあえぐように
悪の水面へと浮かび上がっていく。苦しいのか、それとも開放感から出る笑み
なのか分からぬ表情で。

 このようにジョーカーこと主人公アーサーは、自ら道を選んで悪の轍を踏んだ
わけではない。そこにはダークヒーローなどといった気取ったワードとは無縁の、
逃れられない運命の帰結として悪が存在する。人生に選択の余地を与えぬ、
容赦ない哀しみの腐臭を放ちながら。

“狂っているのは僕か? それとも世間か???“ ドーランを血に代えた、悲哀
を極める悪の誕生を見た後では、ジョーカーへの同情が意識を遮断し、もはや
バットマンに肩入れすることなどできない。なんとも恐ろしい作品。(尾崎一男)

 ――
▼ 物語の力を感じさせる映画。社会の底辺で、母親の面倒を看る精神疾患の男。
 誰も、自分たちには注意を一切、むけてくれない孤立した人たちが群れるのが
大都会。そこで、一度、底辺に落込んだら… だからピエロ姿の殺人者に対して、
同調者が英雄に祭り上げる社会風刺そのものが味がある。 劇場から出てきた
中年女性同士の会話が、『さっぱり、理解できなかった』と。 遺跡巡りが
好きな人が、『家内が、こんな工事現場のような石組の何が良いの?』と
不思議そうに言うがごとし。 ここで、フッと浮んで来たのが、『悪魔の代弁者』。

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10月19日(土)
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