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On the Production
by 井口健二
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■架空の犬と嘘をつく猫、役者になったスパイ、Good Luck
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『架空の犬と嘘をつく猫』
2014年「ピオレタ」でポプラ社小説新人賞を受賞などの寺地
はるなによる原作を、2011年5月紹介『乱反射』などの菅野
友恵が脚色、CM出身で各国映画祭での受賞歴のある森ガキ
侑大監督が映画化した作品。
登場するのは母親が心に疾患を負っている一家。その原因は
幼い子供の死にあるようで、そんな母親の心を亡くなった子
の兄である主人公が健気に支えている。しかし彼の姉はその
環境に耐え切れず家を出て行ってしまう。
そんな主人公は年上の女性に恋心を持つが彼女に受け入れて
はもらえない。そして幼馴染みの女性の愛を受け入れ、結婚
も考えるようになるが、そこにも年上の女性の影が落ちてく
る。それらは全て彼の優しさに起因するものだった。
そしてある事情から一家が顔を揃えることになった日、そこ
には不倫で家を出て行った父親や姉も帰ってくる。そんな一
同が会した場所で彼が執った行為とは…。物語は20年の年月
に亙って描かれる。
出演は高杉真宙、伊藤万理華、深川麻衣、安藤裕子、向里祐
香、ヒコロヒー。他に鈴木砂羽、松岡依郁美、森田想、高尾
悠希、後藤剛範、長友郁真。そしてはなわ、安田顕、余貴美
子、柄本明らが脇を固めている。
物語は普遍的なものではないが、誰にでも降りかかってくる
かもしれない状況が描かれる。そして登場する人物たちはご
く普通に自分たちであるかもしれないように描かれており、
それが深みになっている。
僕自身は同じ男性として主人公に感情移入したが、観る人に
よっては他の人物に感情移入することもできるようだ。集団
劇ではないが、そんな幅広い観客に受け入れられる作品にも
なっている。
それにしても感情移入した目で見ていて主人公の優しさが心
に沁み渡る作品だ。実は主人公には隠された一面もあるのだ
が、それも彼の優しさゆえであり、その辺の描き方も見事な
作品だった。
そして映画の結末では全ての人に優しさが溢れだす、そんな
描き方も素晴らしい。今年一番の優しい映画に出会えた感じ
がした。
公開はロケ地の佐賀県唐津で先行上映の後、2026年1月9日
から東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて全国ロードショウ
となる。
なおこの紹介文は、配給会社ポニーキャニオンの招待で試写
を観て投稿するものです。

『役者になったスパイ』“Moskau Einfach!”
1989年、冷戦下のスイスで起きた政治スキャンダルの実話に
基づく作品。
1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊する冷戦最末期のスイ
ス。永世中立国として成立するこの国では共産政権のソビエ
ト連邦からの脅威に政治が揺れていた。そして国内では国民
皆兵の軍隊の廃止などが叫ばれ始める。
この事態に警察は秘密裏に国民の監視を開始。フィッシュと
呼ばれるカードに個人情報が記録されて行く。それはナチス
ドイツのゲシュタポの所業にも通じる、民主主義の社会では
あってはならないことだった。
そんな状況の中で主人公はとある劇団を監視する任に着いて
いた警察官だったが、その主人公に劇団に潜入して内部情報
を集める指令が下される。そしてエキストラの募集に乗じて
劇団への潜入に成功するが…。
劇団の中には演出家との対立など様々な軋轢があり、その調
査の過程で主人公は主演女優に惹かれ始める。しかも主人公
には、ある事情で役者が降板した配役への抜擢も決まってし
まう。選ぶべきは任務か恋か?
脚本と監督は2015年『まともな男』などのミヒャ・レビンス

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11月16日(日)
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