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On the Production
by 井口健二
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■室町無頼、映画を愛する君へ、おんどりの鳴く前に、嗤う蟲、愛を耕すひと
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『室町無頼』
2023年直木賞受賞の垣根涼介が2016年に発表した原作から、
2024年2月紹介『あんのこと』や2020年1月紹介『AI崩壊』
などの入江悠脚本/監督で映画化した作品。なお本作に関し
ては2024年2月に記者会見の報告もしているが、その作品が
完成したものだ。
物語の背景は室町時代。登場するのは歴史書に1回だけ名前
が出てくるという蓮田兵衛。蓮田の名は寛正三年の徳政一揆
で大将だったというもの。それまでの一揆はただの暴動だっ
たが、この時初めて組織戦が行われたという。
その蓮田に対するのは骨皮道賢。こちらは複数の史書に名前
があるようだが、蓮田との交流の記録はない。しかし同時期
に出自が似た境遇となれば、このような物語も生まれたかも
しれない。そんな見事なフィクションの世界だ。
そこに天涯孤独の若き剣士や高級遊女などを絡めて、後に戦
国となる時代の幕開けを告げる応仁の乱、その前夜の物語が
展開される。
出演は大泉洋、堤真一、長尾謙杜(なにわ男子)、それに松本
若菜。他に柄本明、北村一輝。さらに般若、武田梨奈、水澤
紳吾、遠藤雄弥、前野朋哉、中村蒼らが脇を固めている。
大泉洋に関しては2015年『駆込み女と駆出し男』の記者会見
での振る舞いで極めて印象が悪いものだが。本作は同作以来
の時代劇かな。でも刀を使った殺陣を演じるのは今回が初め
てだったようで、それは良く演じられていた。
その殺陣シーンは東京のアクション監督・川澄朋章と京都の
殺陣師・清家一斗の競作だそうで、大泉、堤を始め長尾の棒
術使いも見応えがあった。特に長尾はかなり長尺のシーンも
あってワンカット風のその演出も見事だったものだ。
さらに壮大な爆破シーンには東映京都撮影所の職人芸と、東
映アニメーションによるVFXが加味されたということで、
これも中々の見ものになっている。正に東映時代劇の復活と
いう感じもする作品だ。
未曾有の天災に伴う飢饉(物価高)、さらに疫病の蔓延など、
現代に重ねることも容易な物語。その一方で公家たちは民か
ら集めた税金で優雅に庭園造り(万博・神宮外苑の再開発)な
どを楽しんでいる。それに対して遂に民衆が決起する。
さすが入江悠監督という感じの作品だ。
公開は2025年1月17日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す
るものです。
『映画を愛する君へ』“Spectateurs!”
フランスの国立映画学校で学び、1991年のデビュー作『ニ十
歳の死』でジャン・ヴィゴ賞を受賞したアルノー・デプレシ
ャン脚本、監督による自伝的要素の強い映画史作品。
主人公は6歳の時に祖母に連れられて初めて映画館に行き、
そこで映画の魅力に憑りつかれる。そして学生時代は映画部
に所属し、卒業後は評論家を足掛かりに映画監督の道へと進
んで行く。
そんな男性の成長が、無声映画から現代までの数多の映画ク
リップと共に綴られる。そこには1964年の『ファントマ危機
脱出』から2008年の『フローズン・リバー』まで、僕自身の
映画歴にも重なる作品も多く登場する。
出演は、主人公の各年代を演じるルイス・バーマン、ミロ・
マシャド=グラナー、サム・シェモール、それにサリフ・シ
セ。他に過去の作品で監督の分身の役柄を演じたマチュー・
アマルリクが彼自身の役で登場する。
挿入される映画は総数51本。そこには世界最初の映画とされ
る1896年のリュミエール兄弟作品『ラ・シオタ駅への列車の
到着』から1927年アベル・ガンスの『ナポレオン』など歴史
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12月08日(日)
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