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On the Production
by 井口健二
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■アウシュヴィッツの生還者、たまつきの夢、あしたの少女、ジェーンとシャルロット
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『アウシュヴィッツの生還者』“The Survivor”
ポーランド出身で第2次大戦後にアメリカに渡り、タイトル
にもなっている異名で活躍したプロボクサーの実話を、オス
カー受賞の1988年『レインマン』や2010年6月紹介『トラブ
ル・イン・ハリウッド』などのバリー・レヴィンスン監督が
映画化した作品。
舞台は1949年のニューヨーク。主人公は戦歴13勝で将来を嘱
望されるプロ・ボクサー。ところがその頃から戦時下での体
験がフラッシュバックし始め、そのため極度の不振に陥って
しまう。
そんな彼が次のチャンピオンと目されるボクサーとの戦いを
希望する。それはポーランドで生き別れた恋人の消息を知る
ため、名声を得て恋人に自分の生存を知らせたいという目論
見だった。
そんな彼に1人の新聞記者が接近する。その記者は彼の生き
様に興味があり、それを記事にしたいと提案する。それは新
聞で名を売り、次期チャンピオンとの一戦に近付く手段にも
なるものだったが…。
トレーナーでもある兄の忠告も振り切って彼が語ったのは、
彼がナチスの将校の庇護の下、将校たちの慰みだったユダヤ
人同士の賭け試合で勝ち続け、敗者はその場で銃殺されたと
いう衝撃の事実だった。
その記事は世間の注目を浴び、彼は次期チャンピオンとの一
戦を勝ち取るが、同時にユダヤ人社会からの猛烈な非難も受
けることになってしまう。そしてそれは彼に別の想いももた
らすことになる。
出演は、2016年10月紹介『インフェルノ』などのベン・フォ
スターと、2016年6月紹介『コロニア』などのヴィッキー・
クリープス。他に2019年5月紹介『アラジン』に出ていたと
いうビリー・マグヌッセン、2004年8月紹介『ニュースの天
才』などのピーター・サースガード。
さらにイスラエル出身で現地のテレビシリーズなどで人気の
ダル・ズーゾフスキー、2017年4月9日題名紹介『ジョン・
ウィック』シリーズなどのジョン・レグイザモ、2004年1月
紹介『ビッグ・フィッシュ』などのダニー・デ・ヴィートら
が脇を固めている。
自分の父親がシベリア抑留者だったこともあって興味を惹か
れた。もちろん戦時捕虜とユダヤ人では状況は異なるが、昭
和23年まで帰国できなかった父は生前、「転んだ連中は早く
帰国できた」とも話していた。父はそれを良し悪しでは話さ
なかったが、そういうことだったのだろう。
この主人公の立場も一概に批判できるものではないし、逆に
それを非難したくなる気持ちも理解できる。そんな極限の状
況が語られているとも言える。そしてそれが別の悲劇も生み
だす。それら諸悪の根源が戦争にあることも明白に描かれた
作品だ。
公開は8月11日より、東京地区は新宿武蔵野館他にて全国ロ
ードショウとなる。
『たまつきの夢』
2012年に始まった気鋭のミュージシャンと新進監督のコラボ
レーションによる音楽×映画プロジェクト=MOOSIC LABで、
2019年度に出品された上映時間30分の作品が、61分の完全版
で一般公開される。
時代は第2次大戦前の昭和期、南京事変が起きて軍靴の響き
が着実に近付いている社会情勢の中で、戦地からの手紙で弟
の死を知った女性と、結核で兵役免除となり撞球場で暮らす
若者が互いの夢を語り合う。
タイトルの「たまつき」はビリヤードのことだが、ここでは
そのプレーヤーのことを指すのかな。実際に明治時代から広
まった日本のビリヤードは、昭和初期には世界チャンピオン
を生み出すほどの隆盛だったようだ。
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06月11日(日)
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