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On the Production
by 井口健二
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■ペーパーシティ―東京大空襲の記憶、マッシブ・タレント、せかいのおきく、独裁者たちのとき、日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ペーパーシティ―東京大空襲の記憶』“Paper City”
東京在住のオーストラリア人の監督が、1945年3月10日夜半
に東京を襲った大空襲について描いたドキュメンタリー。
実は試写の前に監督の挨拶があって、そこで監督はヨーロッ
パで同様の空襲があった都市や、日本では広島、長崎にも犠
牲者の名前を記した追悼碑があるのに、東京大空種にそれが
ないのはなぜか、その疑問が始まりだったと語っていた。
実際に東京大空襲では10万人以上の民間人が犠牲になったと
されるが、その実態を日本政府は把握しておらず、調査をし
ようともしていないのだそうだ。そしてその被災者に対して
は、何の補償もされたことがない。
そんな現状が、独自に犠牲者の名簿を作った町会や、政府に
対して犠牲者の補償を求める署名運動を行っている人たちの
取材を通じて描かれる。しかしその運動を続ける人たちも、
既に80代、90代の高齢者ばかりだ。
そしてその運動に対する右翼の嫌がらせも描かれる。
監督のエイドリアン・フランシスはオーストリア・アデレー
ドの生まれ、メルボルン大学でドキュメンタリー映画専攻を
卒業。15年程前に東京に拠点を移し、短編ドキュメンタリー
で映画祭の受賞歴もある。
本作はそんな監督の初長編プロジェクトだそうだ。
そんな監督が東京大空襲を知ったのは来日して数年間経って
からだという。それは戦勝国である母国の教育では触れられ
ることもなかったものであり、初めて知った時のショックは
計り知れないものであったという。
しかもその記憶が、被災者である都民や日本人の中からも消
えようとしている。なぜ日本人は被災の記憶を消し去ろうと
しているのか? そんな思いに駆られての本作の制作だった
のかもしれない。
実は今回事実関係を調べていて、英語の文献で東京大空襲に
関して使われるのがfier bombingという言葉で、通常の空襲
を意味するsky attackと区別されていることに気が付いた。
それは正に焼夷弾攻撃ということだ。
因に日本攻撃に用いられたのはM69焼夷弾というものだが、
その焼夷剤にはナパームが使用されている。このナパームは
ベトナム戦争以降は「非人道的」としてアメリカ軍では使用
が禁止されているものだ。
それが東京の下町をそして民間人を焼き尽くした。実は上記
の右翼の嫌がらせの言葉で「抗議は日本政府ではなく、空襲
を行ったアメリカ合衆国の大使館にしなさい」という下りが
あったが、ある意味これは正しい。
しかし一般国民が他国の政府に抗議するのは耳を貸して貰え
る筋ではなく、それは日本国政府がするべきもの。それをし
ないことに抗議しているものだ。そういうことも明白にして
欲しかったが、外国人の監督には望むべくではない。
寧ろこういう作品を描いてこなかった日本の監督にこそ不満
を述べたくなる、そんな感じもしてくる作品だった。
公開は2月25日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラムにてロードショウとなる。
『マッシブ・タレント』
“The Unbearable Weight of Massive Talent”
全世界67カ国で初登場トップ10入りのスマッシュヒットを記
録したというニコラス・ケイジ主演の2022年本国公開作。
登場するのはハリウッドスターのニック・ケイジ。彼はアカ
デミー賞にも輝いたトップスターだったが、最近は作品に恵
まれず、家族には疎まれ借金もかさんでいた。そんなスター
にスペインで富豪の誕生日パーティーに出席したら 100万$
という仕事が舞い込む。
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01月29日(日)
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