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On the Production
by 井口健二
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■世界は僕らに気づかない、小さき麦の花、レジェンド&バタフライ
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『世界は僕らに気づかない/Angry Son』
群馬県太田市を舞台にジャッピーノと呼ばれるフィリピン人
2世の暮らしぶりを描いて、2022年大阪アジアン映画祭コン
ペティション部門「来るべき才能賞」受賞を始め、ドイツ、
韓国、アメリカ、香港、オランダなど各地の映画祭での上映
も続いている作品。
主人公は日本生まれ日本育ちの高校生だが、母親はフィリピ
ンパブで働くフィリピン人で彼の国籍もフィリピンになって
いる。そして彼は父親を知らないが、彼宛てには毎月一定額
の養育費が振り込まれているようだ。
そんな主人公はトランスジェンダーで、幼い頃からの恋人に
は市の認めるパートナーシップの申請を求められているが、
自身の生い立ち考えて踏み出せずにいる。そんな時、母親が
再婚を言い出し、知らぬ男性が家に入ってくる。
この状況に主人公は家を飛び出し、本当の父親を捜し始める
が…。その探索行の中での様々な人との出会いが彼自身を見
つめ直し成長させて行く。社会的に大きなテーマの作品では
あるが、若者の成長を描く普遍的な作品でもある。
出演は、2021年『東京リベンジャーズ』などの堀家一希と、
スコットランドとフィリピンのハーフで1998年『ウルトラマ
ンガイア』などの(マリア・テレサ・)ガウ。他に篠原雅史、
村山朋果、岩谷健司らが脇を固めている。
脚本と監督は、2011年『僕らの未来』という作品がぴあフィ
ルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞。同作がバンクー
バー国際映画祭など海外の映画祭でも上映されたという飯塚
花笑。商業映画は2作目のようだ。
本作は自身がトランスジェンダーだと言う監督の実体験にも
基づく作品だそうで、幼い頃のいじめや様々な差別の問題も
描かれている。ただしそれをことさら深刻ぶるのではなく、
ユーモアも交えて描いているのも巧みに感じられた。
近年この種の差別を描く作品が増えているようにも感じる。
その一方で SNSなどによる差別に絡む誹謗中傷も絶えない訳
で、それを訴え続けることに疲弊してしまう感じも持つが、
これを続けることしか方法はないのだろう。
その意味でも出来るだけ多くの人に観て貰いたい作品だ。こ
れが映画のあるべき姿とも言える。世界の映画祭が認める若
き才能に刮目せよ。
公開は2023年1月13日より、東京は新宿シネマカリテ、渋谷
Bunkamura ル・シネマ他にて全国ロードショウとなる。
なお劇中、主人公の部屋の壁にTHESPAの応援グッズが貼られ
ていたのも気になった。

『小さき麦の花』“隐入尘烟/隠入塵煙”
2014年11月2日東京国際映画祭《コンペティション部門》で
紹介『遥かなる家』(日本公開題名:僕たちの家に帰ろう)な
どのリー・ルイジュン監督による2022年ベルリン国際映画祭
コンペティション部門正式出品作品。因に2014年の作品は、
僕的には映画祭の芸術貢献賞を授けるべきと考えたものだ。
本作の舞台は2011年中国西北地方の農村。その村で農業を営
む主人公は4人兄弟の末弟だったが、上の兄2人は亡くなり
三男の家で暮らしている。しかし三男の子供の婚約が進み、
主人公の同居が問題となる。
そこで主人公には少し障害を持つ近所の女性があてがわれ、
本人たちの意思は斟酌されずに2人は夫婦となる。こうして
村社会のはみ出し者だった2人の夫婦生活が始まるが、主人
公には村の雑用のような仕事も押し付けられる。
そんな中で主人公の血液型が稀少なRh−と判明し、村の実力
者の健康に必需となる。とは言え2人の生活が変わるもので

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12月04日(日)
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