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On the Production
by 井口健二
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■シャドウプレイ、とべない風船、母の聖戦
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『シャドウプレイ』“风中有朵雨做的云”
2008年5月紹介『天安門、恋人たち』などで中国映画第6世
代の旗手とも言われるロウ・イエ監督による2018年の作品。
なお本作は2019年第20回東京フィルメックスのオープニング
でも上映されているが、今回はその際の上映時間より約5分
長い【完全版】となっている。
物語の発端は2006年、水辺の草むらで身体を重ねていた若い
カップルが腐乱しかけた遺体を発見する。
それから7年後の2013年4月14日、広州市の「都会の村」と
呼ばれるビジネス街の中の開発から取り残された地区で、立
ち退きを迫る開発業者とそれに反対する住民との間で大規模
な騒乱事件が起きる。
その現場を訪れた市当局の開発担当は住民の説得に奔走する
が、ふと関係者が目をくらませた隙に、その担当者が近くの
ビルの屋上から転落。果たしてその転落は事故か他殺か。そ
の解明はやがて思いもよらぬ事件に発展する。
出演は、中国のオーディション番組での優勝者というジン・
ボーラン、2008年8月紹介『レッド・クリフ』に出演のソン
・ジア、2010年7月紹介『スプリング・フィーバー』などイ
エ監督作品の常連チン・ハオ。
さらにマー・スーチュン、チャン・ソンウェン、ミシェル・
チェン、エディソン・チャンらが脇を固めている。因にエデ
ィソン・チャンの出演シーンはフィルメックス時の公開版で
はカットされていたそうだ。
劇中描かれる2013年の騒乱事件は実話だそうで、この辺も検
閲の対象だったのかな。そんな実在の事件を背景に様々な要
素の絡まるクライム・サスペンスが展開される。
その物語にはいくつもの時間軸があってかなり複雑。しかも
2つの時間軸が交錯するシーンがあるなど、トリッキーな演
出も施されている。しかし事件の顛末に関しては明快で、そ
れは判り易く作られていた。
でもそこに盛り込まれた人間模様は複雑かつ深刻で、この巧
みさはイエ監督の真骨頂という感じかな。とにかく見ごたえ
のある、これぞ映画という感じの作品で、久しぶりに映画を
堪能した気分になれた。
公開は2023年1月20日より、東京は新宿K's cinema、池袋シ
ネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他にて全国順次ロードショ
ウとなる。
『とべない風船』
広島を拠点にCMや短編作品の制作で受賞歴もある宮川博至
監督が、多島美に彩られる瀬戸内の島を舞台に平成30年7月
の豪雨災害の傷跡を描いた作品。
主人公の女性は、都会の生活に疲れてその島に住む父親の許
を訪れるが、数年前にその島で亡くなった母親の死の状況を
巡って父親と確執があるようだ。しかし元教師でもある父親
は島では先生と呼ばれて、静かな暮らしぶりだった。
そんな父親の許には毎日近所の漁師が釣果を持ってくるが、
脚に傷を負い寡黙なその男性には記憶から消すことのできな
い過酷な過去があった。そんな男性が気になる主人公は、少
しずつ彼に近付いて行くが…。
出演は、2019年11月24日題名紹介『ロマンスドール』などの
三浦透子と2018年8月26日題名紹介『ビブリア古書堂の事件
手帖』などの東出昌大。さらに小林薫、浅田美代子。さらに
原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、子役の有香らが脇を固めて
いる。
題名の中にある「風船」はスクリーンでは風の字が逆さまに
なっているが、劇中では糸に繋がれたままの風船が風に翻弄
されて、悶えているようにも見える感じなのかな。それが結
末のシーンにも繋がるようになっているものだ。
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11月20日(日)
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