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On the Production
by 井口健二
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■ファイブ・デビルズ
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ファイブ・デビルズ』“Les cinq diables”
2013年の第66回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた
『アデル、ブルーは熱い色』などのアデル・エグザルコプロ
ス主演で、香りに導かれて運命に翻弄される少女の姿を描い
たオカルト的な色彩の濃い第75回カンヌ選出作品。
物語の中心は10歳の少女。水泳のインストラクターを務める
アデル扮する母親と、消防士でアフリカ系の父親と共にアル
プス山麓の村で暮らしているが、父親と同じ肌の色と縮れた
髪を持つ彼女は同級生のいじめの標的でもあった。
そんな少女は常人を超える嗅覚の持ち主で、その楽しみは周
囲にあるいろいろなものの匂いを集めること。特に大好きな
母親が寒中水泳をする際に体に塗る油脂の香りは少女に至福
の時を与えるものだった。
ところがそんな少女の幸せがある人物の登場で一変する。そ
れは少女の叔母である父親の妹の突然の来訪で、その出現は
村の人たちにもただならぬ動揺を与えているようだった。そ
こで少女は叔母の持ち物を漁り始めるが…。
とある香りが少女を叔母と母親の出会いの時にタイムリープ
させる。それは体操競技に熱中する叔母と母親との青春の一
ページだったが、それがやがて過去の忌まわしい出来事の謎
を解き明かしてしまう。
共演は、2010年生まれで本作で抜擢されたサリー・ドラメ、
歌手で舞台女優でもあるスワラ・エマティ、セネガル出身の
ムスタファ・ムベング。さらにダフネ・パタキア、ベテラン
のパトリック・ブシテーらが脇を固めている。
監督と脚本は、2021年のカンヌで正式上映されたジャック・
オディアール監督『パリ13区』で共同脚本を手掛けたレア・
ミシウス。なお本作が長編2作目の女流監督は、2017年のデ
ビュー作『アヴァ』もカンヌで正式上映されている。
香りでタイムリープと言うと1983年『時をかける少女』など
の筒井康隆原作ジュヴナイルSF小説が思い浮かぶが、本作
はタイムリープと言うより残留思念に基づくサイコメトリー
の方に近い感じがする。
しかしそれだけでは割り切れない部分もあって、それがタイ
ムパラドックスにもなっているところはSFファンには悩ま
しい展開と言えそうだ。いずれにしてもタームリープ=SF
と単純に割り切れる作品ではない。
そんな訳で最初に書いたような分類とさせてもらうが、多分
監督らには元々そのような意図はなく、カンヌでの選出テー
マに沿うものが主眼だったのだろう。それは今日的と言える
作品だ。
公開は11月18日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺他にて全国ロードシ
ョウとなる。
10月23日(日)
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