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On the Production
by 井口健二
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■ippo、終末の探偵
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ippo』
2019年6月紹介『火口のふたり』などの俳優柄本佑が2017年
から2022年に監督した3本の短編映画を纏めた作品。元は劇
作家・加藤一裕のオムニバス舞台劇から全4話中の3篇を映
画化したものとなっている。
その1話目は2017年製作の『ムーンライト下落合』。小さな
アパートの一室が舞台で、その部屋の住人とそこに前夜から
泊まっている友達との会話劇が繰り広げられる。ペットボト
ルの水をコップに注いで飲むような、その微妙な距離感や会
話の食い違いがドラマとなっている作品だ。
まあ全体的には成る程と思わせる作品だが、最後に窓から見
る満月は午前2時という設定ではあの角度はおかしい。別段
科学的にどうこうという話ではないが…。
出演者は加瀬亮と宇野祥平。
第2話は2020年製作の『約束』。古びた団地の中にある公園
を舞台に、年齢の違う2人の男性がある事情で親戚を訪ねる
前の打ち合わせをしている。その会話は彼らの幼少期の思い
出にも繋がって行くが…。ちょっとファンタシーなところや
不条理な演出もある作品だ。
出演者は渋川清彦と柄本時生。
そして第3話は2019年製作の『フランスにいる』。グルノー
ブルの小さなアトリエを舞台に、一人旅をしている日本人男
性と、彼を街で見掛けて肖像画を描きたいと申し出た日本人
画家との会話劇が展開される。ところが画家の発言がだんだ
んおかしくなり…。
出演者は高良健吾と加藤一裕。
因にこの第3話の劇中で室内に置かれている映画のポスター
“Aniki Bóbó”は、2010年7月紹介『ブロンド少女は過激に
美しく』を 100歳で制作したポルトガル人の監督マノエル・
デ・オリヴェイラが1942年に発表した長編(68分)デビュー作
のもの。104歳まで現役を貫き、106歳で他界した名匠は柄本
監督の目標なのかな。
3本をまとめて観ると、不条理劇の一歩手前という感じなの
かな。ただ解説によると原作戯曲の中で映画化されなかった
1篇は完全に不条理だったようで、僕としてはそこも含めた
全体を観たかったという感覚が残る作品だった。
正直に言って柄本佑監督だから観たという感じの試写だった
が、この線を追求してくれるのなら、もっと他の作品も観た
くなる。そんな感じの作品でもあった。監督と劇作家で進め
ていたという長編もいつか実現して欲しいものだ。
公開は2023年1月7日より、東京は渋谷ユーロスペース他に
て全国順次ロードショウとなる。
『終末の探偵』
2019年4月28日題名紹介『新聞記者』などの北村有起哉の主
演で、昭和を髣髴とさせる私立探偵の生き様を描いた作品。
主人公は喫茶店の片隅を事務所代わりにしている一匹狼の探
偵。元々はよそ者だったがその町に流れ着き、裏社会とも繋
がりを持ちながら何とか暮らしている。しかしギャンブル狂
いの上に酒癖も悪く、賭場でのトラブルも茶飯事だ。
そんな主人公が賭場の借金の肩代わりを条件にヤクザの依頼
を受けることになる。それはヤクザの事務所への放火事件の
調査で、中華系マフィアの指金との情報もあるが、暴対法と
の兼ね合いでヤクザは組織では動けない。そこで主人公に探
りを入れてくれという依頼だったのだが…。
一方、喫茶店の事務所に戻った主人公を1人の女性が待って
いた。彼女は失踪したクルド人女性を探してくれと依頼する
が、主人公の手には余る仕事に見えた。しかし依頼人の名前
からある事実を思い出した主人公は捜査を開始。しかしそれ
はとんでもない社会の闇を照らすことになる。
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10月16日(日)
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