ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459552hit]

■月の満ち欠け、猫たちのアパートメント
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『月の満ち欠け』
2017年第 157回直木賞を受賞した佐藤正午の原作を、2021年
テレビドラマ『日本沈没-希望のひと-』で橋田賞受賞の橋本
裕志が脚色、2017年7月紹介『ナミヤ雑貨店の奇跡』などの
廣木隆一監督で映画化した作品。
主人公は青森県八戸漁港で仲買の仕事をしている男性。彼は
交通事故で妻子を失い、東京での成功した仕事を捨てて故郷
に帰っていた。そんな主人公を写真家の名刺を持つ男性が訪
ねてくる。
その男性は、事故死した主人公の娘が自分を訪ねてくる途中
だったと話し、それに遡る彼と娘との関係を語りだすが…。
それは主人公の脳裏に幼少期の娘の異様な行動を思い出させ
るものだった。
そしてそこには写真家の男性とある女性との秘められた恋の
物語が隠されていた。しかもそれは主人公の娘を巡るさらに
大きな謎へと繋がって行く。27年の歳月を繋いで、壮大な愛
の物語が展開される。
出演は大泉洋と目黒蓮(Snow Man)。そして有村架純と柴咲コ
ウ。他に田中圭、伊藤沙里、菊池日菜子。さらに小山紗愛、
安倍久令亜、尾杉麻友、寛一郎、波岡一喜、安藤玉恵、丘み
つ子らが脇を固めている。
劇中では1980年代の高田馬場駅前や早稲田松竹がキーとなる
場所として出てくるが、特に駅前のシーンは茨城県に巨大な
オープンセットを建設して撮影したものだそうで、その再現
性は見事なもの。
特に横断歩道の塗装や歩行者用信号機の色彩には監督の拘り
が伝わってきた。
ただしそこで撮影されたクライマックスシーンには、苦肉の
策という感じもした。原作がどう表現しているかは知らない
が、字面でOKでも映像では描けないものもある。それを本
作では見事にファンタシーで納めているが、許容かな。
他にも突っ込みどころはいろいろあるが、逆にこのシーンが
全てを許容させる源になっているような気もした。映画は嘘
を吐くもの。脚本家及び監督のファンタシーへの理解度も了
解できた。これで良いのだ。
公開は12月2日より、東京は丸の内ピカデリー、新宿ピカデ
リー他にて全国ロードショウとなる。
劇中に流れる音楽と併せて、年の瀬に鑑賞するにはぴったり
の作品だ。

『猫たちのアパートメント』“고양이들의 아파트”
2001年『子猫をお願い』のヒットで韓国映画界における女性
の地位を高めたとされるチョン・ジェウン監督が、巨大団地
の再開発に伴う野良猫の処遇を追ったドキュメンタリー。
遁村団地、ソウル市江東区でかつては東洋一の規模とも言わ
れたそのアパート群は1980年竣工、18万坪の敷地に 147棟が
建てられ、一時は6千世帯、3万人前後の人々が暮らしてい
たとされる。
しかし2000年代初頭に、主には事業性の観点から再開発の論
議が高まり、その頃から急速な老朽化も進んで2017年に再開
発が決定された。そして2021年末には全棟の撤去が完了した
とされるが、そこには約 250匹の野良猫も暮らしていた。
本作は作家でその団地の住人でもあったイ・インギュ女史を
中心に、団地で暮らしていた野良猫たちを安全な場所に移す
<猫の幸せ移住計画クラブ>の活動を主なテーマとして描い
て行く。
監督は、日韓合作で中山美穂主演の2018年3月4日題名紹介
『蝶の眠り』でも知られるが、それに並行して2012年『語る
建築家』に始まる都市と人の関係を描いたドキュメンタリー
も発表しており、本作はその観点の作品と言える。
実際に本作の舞台となっている団地は竣工から20年で再開発

[5]続きを読む

09月25日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る