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On the Production
by 井口健二
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■裸のムラ、メイクアップ・アーティスト
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『裸のムラ』
兵庫県出身で大学卒業後に富山チューリップテレビ入社、同
局で日本民間放送連盟賞優秀賞や文化庁芸術祭優秀賞などの
ドキュメンタリーを制作した五百旗頭幸雄監督が、2020年に
石川テレビに移籍して発表した2本のドキュメンタリー番組
を基とした作品。
2022年3月、それまで7期27年続いた前知事に替って元プロ
レスラーで前衆議院議員の馳浩が新県知事に当選した。その
裏面に蠢く人間模様と同じ石川で暮らすイスラム教徒一家、
さらにヴァンライファ―の暮らしぶりが描かれる。
普通このような複数のテーマを追う作品では、一つを縦軸に
他を横軸になどと書くが、本作の場合は横軸はなく、三つの
テーマがそれぞれ独立に描かれる。そこでこの三つのテーマ
に関連性があるかと言うと、それも全くない。
ではなぜこの三つを一緒に描いたのかと言うと、その状況の
説明もされることはなく、それらが入れ子で描かれる作品は
観る者を混乱に陥れるだけで、それがそれぞれのテーマ性を
希薄にしているとしか思えなかった。
それはテレビドキュメンタリーなどでは、ただ風景だけを写
す観光映画のような、テーマ性の無いものもあるが。監督の
出自からしてそれを狙っているとは思えず、深遠な思惑があ
るのかもしれないが、僕にはそれは理解できなかった。
出来ることなら、これらの三つのテーマをそれぞれに掘り下
げた3本の独立した作品を観たいものだ。例えばヴァンライ
ファ―、若しくはイスラム一家を縦軸に県知事選を彩り程度
に差し込んだ、そんな2作品を観たいとも思った。
公開は10月8日より、東京はポレポレ東中野と石川県は金沢
市のシネモンド他にて全国順次ロードショウとなる。
『メイクアップ・アーティスト:ケヴイン・オークイン・ス
トーリー』“Larger Than Life: The Kevyn Aucoin Story”
1990年代に革命的ともされるメイクアップ技術を駆使し一世
風靡したアーティスト生涯を、自らもメイクアップ・アーテ
ィスト出身のティファニー・バルトーク監督が描いたドキュ
メンタリー。
1962年ルイジアナ州生まれの少年は、生後1カ月でフランス
系一家の養子となり、同じく養子の妹・弟と共に成長する。
しかし野球のコーチだった養父の男らしさを求める養育には
ついていけなかった。
そんな中で歌手バーブラ・ストライサンドのメイクに興味を
持った少年は、美しい女性の絵を描くようになり、やがて保
守的な故郷を飛び出しニューヨークへ向かう。そこで自らを
「醜い=悪」と思っていた少年は、「美しい=良い」という
思想でメイクアップによる美を追求し始める。
そして無料でモデルのテスト・メイクをしながら食い繋いだ
若者はめきめきと頭角を現し、8ヶ月で「ヴォーグ」誌の撮
影に呼ばれ、ファッション業界に足場を築き上げる。さらに
21歳の時にはレブロン社のクリエイティヴ・ディレクターに
起用されるまでになる。
ところが2000年頃から頭痛や精神的圧迫に悩まされるように
なり、やがて薬剤の摂取などによる障害がアーティストの身
体を蝕んで行く。それはある難病が原因だったが…。
映画ファンとしてメイクアップと言われると1981年から授賞
が始まったアカデミー賞の部門を思い浮かべてしまうが、本
作でもちょうどその頃からアーティストの活躍は始まってい
るようで、そういう時代背景なのかなとも思ってしまう。
正直に言って僕のメイクアップへの認識はそんなものだった
が、本作を観ているとその奥の深さみたいなものも理解でき
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08月21日(日)
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