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On the Production
by 井口健二
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■アプローズ、ALIVEHOON、とら男、島守の塔
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『アプローズ、アプローズ!』“Un triomphe”
1985年にスウェーデンで起きた実話を基にフランスで映画化
され、2020年のカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション
に選出された人間ドラマ。
主人公は売れない舞台俳優。娘とやはり舞台俳優の妻もいる
が、娘は学業が忙しいと父親には会いたがらず、それでも母
親の舞台は観に行っているようだ。そんな主人公の許に刑務
所での演技ワークショップの講師の依頼が来る。それは舞台
の先輩に押し付けられた断れない仕事だった。
そんな訳で気乗りがしないまま訪れた刑務所だったが…。案
の定、集まっているのは不満ばかり述べ立てる受刑者たち、
特に先任者がやり残した寓話の舞台劇は不評の的だった。そ
の一方で刑務所の所長からは、支援者を集めるために形だけ
でも整えて欲しいと言われてしまう。
そんな中で、囚人の一人が発した「俺たちは待っているだけ
だ」という言葉が光明をもたらす。そこで主人公が思い付い
たのはサミュエル・ベケットの不条理劇『ゴドーを待ちなが
ら』の上演。そこには幾多の困難も待ち受けていたが、ある
モチベーションが囚人たちを纏めて行く。
脚本と監督は、舞台俳優出身で2010年11月紹介『君を想って
海をゆく』のオリジナル脚本も手掛けたエマヌエル・クール
コル。出演は、2018年6月17日題名紹介『オーケストラ・ク
ラス』などのカド・メラッド。コメディアン出身だが前作と
言いこの役柄にはぴったりの人だ。
作品に関しては、実話の当事者である舞台俳優が自ら演じる
舞台劇もあるようだが、プレス資料に掲載された俳優の弁に
よると、事件当時存命だったベケットは彼に対して「これは
自分の戯曲に関わる最高の出来事」と語ったそうだ。ただし
本作ではかなり大幅な脚色もされているが。
因に劇中で上演される不条理劇に関しては中々難解ではある
のだけれど、個人的には先に2019年3月31日題名紹介『柄本
家のゴドー』を観ていたお陰で、主人公の言っていることも
理解はし易かったかな。そこに本作が重なってさらに理解も
進んだ感じがした。
特に劇中劇の結末にはニヤリとしたものだ。そして映画の結
末にはそれを上回る感動があった。
公開は7月29日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町、新宿ピカデリー他で全国ロードショウとなる。

『ALIVEHOONアライブフーン』
日本発のモータースポーツとされるドリフト。そのレースと
そこに繰り広げられる人間模様をCGIなしのリアル映像で
描いた作品。因に題名の中のHOONとは「走り屋」を表す俗語
だそうだ。
物語の中心は伝説のドライバーが率いてドリフトに参戦する
弱小チーム。ところがそのドライバーがレース中に負傷し、
スポンサーを持たないチームは解散の危機の陥る。この危機
にドライバーの娘がスカウトしてきたのは、eゲームのドリ
フトで日本チャンピオンの若者だった。
実際に海外のドリフトレースではeゲーム出身のドライバー
もいるそうだが、言ってみればオタクで実車経験はなく、し
かも人付き合いも上手くない若者が、如何にしてチームとの
輪を構築し自らのアイデンティティーを構築して行くか、そ
んな物語が展開される。
企画・原案は本作のエグゼクティブプロデューサーでもある
2019年2月17日題名紹介『JK☆ROCK』などの影山龍司。実は
試写の前に挨拶があったが、かなりの熱意が伝わってきた。
脚本は2019年9月29日題名紹介『いのちスケッチ』などの作
道雄と多くの作品で監督補などを務める高明。

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05月29日(日)
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