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On the Production
by 井口健二
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■ビリーバーズ、ゆめパのじかん、スープとイデオロギー
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ビリーバーズ』
2019年11月17日題名紹介『ファンシー』などの原作者・山本
直樹が1999〜2000年に発表したコミックスを、2013年12月紹
介『猫侍』や、2019年10月27日付<JAPAN CONTENT SHOWCASE
2019>で紹介『恋の豚』などの城定秀夫監督が、満を持して
映画化した作品。
物語の舞台は、海岸に「私有地につき立ち入り禁止」の立て
札のある絶海の孤島。その島には3人の男女が暮らし、彼ら
はメールで指示された特別な修行に明け暮れていた。そして
謎の段ボール箱を運ぶ作業を行い、それによって食料の配布
を受けていたが…。
絶対的な禁欲によって俗世の汚れを拭い去り、<安住の地>
を目指すという修行を続ける彼らの生活が、届くはずの食料
が滞り始めたことから少しずつ狂いだす。そして予期せぬ闖
入者の来訪は撃退するが、その時から拭い去ったはずの俗世
の汚れが彼らを蝕み始める。
出演は、2017年の連続テレビ小説『ひよっこ』で人気を得た
磯村勇斗(映画初主演)と、撮影当時は21歳の新鋭北村優衣、
それに名バイプレーヤーの宇野祥平。さらに2020年1月紹介
『AI崩壊』などの毎熊克哉と、原作者の山本も登場する。
2019年10月13日題名紹介『エンド・オブ・ステイツ』などの
海外映画の配給を手掛けるクロックワークス社が、映画制作
プロダクションのレオーネと手を組み、Xシネマ界で天才職
人と呼ばれる城定監督を起用して製作した作品。
その企画を進める中で、監督への「今、本当に撮りたいのは
何か?」という問いに対して、即答されたのが本作。それは
原作のテーマ性や過激な描写などハードルは高かったが、脚
本も手掛けた監督の原作者へのリスペクトがR-15指定での映
画化を実現した。
テーマは間違いなくカルト宗教だが、それを前面に押し出さ
ず、敢えて人間の本性を暴くような展開にしているところが
本作の巧みさの様にも感じられる。そしてその人間の本性を
北村優衣が体当たりで演じ切っている。この演出も城定監督
の得意技で安心して観ていられるものだ。
そして全てのシーンが原作へのリスペクトに支えられて見事
に映像化されている。
公開は7月8日より、東京はテアトル新宿他で全国順次上映
となる。

『ゆめパのじかん』
2000年に制定された「川崎市子どもの権利に関する条例」に
基づき、川崎市高津区の工場跡地に2003年開設された「川崎
市子ども夢パーク」(通称・ゆめパ)を、2016年4月紹介『さ
とにきたらええやん』の重江良樹監督が2年の歳月で取材し
制作したドキュメンタリー。
約1万uという敷地には子供たちが大人の干渉なしに自由に
遊べるプレーパークエリア、音楽スタジオや創作スペース、
乳幼児と親子のための部屋、全天候型スポーツ広場などが設
けられ、毎日大勢の子供たちで賑わっている。
その一角には不登校の子供が集まる「フリースペースえん」
も設けられており、そこに来ている4人の子供たちを中心に
本作は作られている。
その中には植物に興味を持って米作りに挑戦する子や昆虫の
観察から社会の仕組みを考える子、木工に興味を持って宮大
工を目指したいとする子やバードカービングを始める子など
もいて、個性溢れる子どもたちが育っていることが判る。
そしてパークの年1回の行事である「こども夢横丁」が開催
される。本作ではその準備から後始末までを子供たちが率先
して行う姿も記録されている。そこには巧みにサポートする
大人の姿もあるが、主役は子どもたちだ。

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05月15日(日)
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