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On the Production
by 井口健二
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■三姉妹、帰らない日曜日、宇宙人の画家
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『三姉妹』“세자매”
2004年1月紹介『Oasis』 などのベテラン女優ムン・ソリが
脚本に感動し、自ら製作も手掛けて映画化した2020年本国公
開の韓国映画。
ソウルに暮らす三姉妹。長女は潰れかけた小さな花屋を営み
ながら女手一つで娘を育てているが、別れた夫の遺した借金
の取り立てが来たり、反抗期の娘は売れないミュージシャン
に入れ挙げたり。そして彼女自身も体調に異変を感じる。
次女は見た目は裕福で教会の聖歌隊の指揮者を務めている。
しかしその内実は、夫の浮気に苦しんでおり、姉の窮状にも
かまっていられない状況だ。そして三女は劇作家として活動
しているが現在はスランプ中。しかもアル中気味でバツイチ
夫の連れ子の息子にはかなり疎まれている。
そんな三姉妹が、父親の誕生日を祝うことになるが…。韓国
社会の縮図の様な、様々なトラブルが彼女らに襲い掛かる。
ムン・ソリが次女を演じ、長女役は2020年3月1日題名紹介
『マルモイことばあつめ』などのキム・ソニョン。三女役は
モデル出身で映画出演は2作目のチャン・ユンジュが演じて
いる。
脚本と監督はキム・ソニョンの夫でもあるイ・スンウォン。
次女や父親は敬虔なキリスト教徒として描かれており、その
家族が陰で何をやっているか、そんな韓国社会の矛盾が描か
れている。その描き方はかなり執拗で、観ている間は苛々さ
せられるが、それが結末に向かって一気に収斂して行く展開
は、正に映画を観ているという感じの醍醐味だった。
これは結末を字面で読んでも判らない面白さで、そういうこ
とをする人たちには判らない世界だろう。これぞ映画という
感じの作品だ。特に最後に登場する2つの動画が、心に深く
突き刺さってくる。これが映画だ。
それにしても本作には韓国人の二面性みたいなものが描き尽
くされている感じで、これは日本人には理解が困難とも感じ
られた。因に監督はクリスチャンなのだそうで、その立場で
これが描けるというのも二面性の表れなのかな? 韓国人は
考えていた以上に複雑だ。
それを見事に表現した3女優には青龍映画賞他、韓国各映画
賞の演技賞が贈られている。
公開は6月17日より、東京は新宿武蔵野館、ヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国ロードショウとなる。

『帰らない日曜日』“Mothering Sunday”
1996年に英国で最も権威ある文学賞の一つとされるブッカー
賞を受賞した作家グレアム・スウィフトが、2016年に自身の
10冊目として上梓した小説の映画化。この原作も1919年に創
設された英国で最も古い文学賞とされるホーソーンデン賞を
受賞している。
1924年3月の第4日曜日。英国で母の日とされるこの日は、
貴族の邸宅などで働くメイドが里帰りを許される日だ。しか
し孤児院育ちの主人公ジェーンには帰る家もなく、館の主人
から借りた自転車で遠出をして同じく借りた本の読書に耽る
つもりでいた。
ところがそこに1本の電話が架かる。それは隣家の跡継ぎの
息子からの誘いの呼び出しだった。実はその息子は別の隣家
の娘と2週間後の結婚式が決まっており、主人公とは最後の
逢瀬となるかもしれなかった。そしてその日は主人公が働く
一家を含む3家族で会食をする予定だった。
そこで息子はその席に遅刻することで時間を作り、家族やメ
イドが出払った邸宅で主人公との逢瀬を楽しもうとしたのだ
が…。この物語にその24年後の出来事と、さらにその後の出
来事が重ねられ、文学を糧に20世紀を駆け抜けた1人の女性
の姿が描かれる。

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05月01日(日)
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