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On the Production
by 井口健二
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■歩いて見た世界、マイスモールランド、ゴースト・フリート、ツユクサ、FLEE、エリザベス
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』
“Nomad: In the Footsteps of Bruce Chatwin”
2017年8月紹介『問いかける焦土』などのヴェルナー・ヘル
ツォーク監督が、1989年に亡くなった旅する作家について描
いた2019年本国公開の作品。
ドイツ出身の監督とイギリス生まれの作家は1983年にオース
トラリアで出会い、共にアボリジニの文化に惹かれた2人は
親交を結ぶ。そして1987年には原作の映画化も行うが…。
本作は作家の生涯を追ったものではあるが、伝記映画ではな
いと監督自身も発言している。それは作家の幼少期の思い出
から作家の道を歩む姿も描くが、それよりも中心に置かれる
のは、監督の作家に対する想いであり、それが本作の制作を
作家の没後30年まで躊躇させた理由だろう。そして描かれた
作品には、作家への愛情がたっぷりと込められていた。
そのことは、全8章に章立てされた映画の第6章「リュック
サック」に端的に表れている。ここでは作家の遺品そのもの
よりも、没後にオマージュとして制作された映画『彼方へ』
の撮影中に監督の命が救われたエピソードが語られ、それは
監督の作家への想いに他ならないのだ。それが微笑ましくも
あり、そんな監督の想いの詰まった作品になっている。
僕は作家についてはあまり知らなかったが、監督の作品はい
ろいろ観てきた中で、本作は監督の本心を知ることのできる
貴重な作品にも思えた。そしてそれは観る者の心をも温める
愛情に溢れた作品だった。作者のファンも監督のファンも、
その想いに共感できる作品だ。
ただし、実はこの試写を観ていて少し気になる点があった。
それは移動の映像などで画面にピクピクと揺れが生じていた
のだ。これはセミプロの作品では時たま見掛ける現象だが、
ディジタルで撮影時と上映時のフレーム数が不一致だと生じ
る。つまり劇場用の毎秒24フレームとテレビ用の30フレーム
との不一致で生じてしまうものなのだ。
そこで本作の来歴を調べると、製作はイギリスのBBC、欧
州での公開はBBCに次いでフランス、ドイツはアルテとい
うテレビ局中心で行われている。従って本来はテレビ用の作
品と言える。それが試写会では劇場用の設定で上映されてし
まったのか。あるいはその逆か。いずれにしても一般公開で
これは解消して欲しいと願うものだ。
公開は6月4日から7月29日まで、最終日を以って閉館する
東京神保町の岩波ホールにてロードショウされる。
実は同ホールも僕には思い出深い場所なので、出来たらこの
ラストショウも観に行きたいものだ。
『マイスモールランド』
是枝裕和監督主宰の映像制作者集団「分福」に所属する川和
田恵真監督が、在日クルド難民の少女を描いた映画デビュー
作。本作は2022年2月に開催の第72回ベルリン国際映画祭で
ジェネレーション部門に選出され、アムネスティ国際映画賞
スペシャルメンションに輝いた。
在日クルド難民の問題は他のドキュメンタリー映画などでも
見聞しているが、その実態はトルコ政府との友好を保ちたい
日本外務省と経済界の意向がクルド民族の難民認定すら阻害
しているものだ。そこには人権より経済優先の日本政府のや
り口が見えてくる。
しかし映画はそんなことは特記せず、あくまで少女の目線で
難民というか在留特別許可者の不安と現状をリアルに描いて
行く。そこには日本人の若者との恋話などもあるが、本質は
日本国憲法が謳う移動の自由も認められない、安寧に暮らす
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04月17日(日)
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