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On the Production
by 井口健二
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■アンナ・カリーナ(いつくしみ、グッド・B、さらばわが愛、ひまわり、許された子ども、今宵、鵞鳥湖、ランブル、バナナP、燕)pandemic映画
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』
             “Anna Karina, souviens-toi”
ヌーヴェルヴァーグの申し子とも言われ、2019年12月14日に
他界した女優の生前に制作されたドキュメンタリー。
映画が始って直のアーカイヴのモノクロ映像で、「どこから
来たんだ?」という男に問いに「アルファヴィル」と答える
シーンが登場して心を鷲掴みにされた。勿論これは1965年の
ジャン=リュック・ゴダール監督作品の1シーンだが、実は
デンマーク出身の女優にこれは見事なプロローグだ。
1940年生まれの女優は、幼い頃の家庭環境はあまり恵まれて
いなかったようだが、船乗りの夫と別れて再婚した母親の連
れ合いがジャズを好んで、コンサートに連れて行って貰った
思い出話などを語る女優の姿は微笑ましかった。
本作は女優の生前パートナーだったデニス・ベリー脚本、監
督によるもので、女優がアーカイヴの映像を見ながら自身を
語る構成。2004年5月紹介『ぼくセザール10歳半1m39p』に
も出ていた女優の正に宝箱という感じの作品だ。
それにしても故郷を飛び出してパリにやってきた女性がモン
マルトルのカフェでモデルにスカウトされる下りは、状況は
違うが2020年3月1日題名紹介『ANNAアナ』に似ている感じ
がして、ひょっとしてリュック・ベッソンはオマージュを捧
げたのか、とも思えてきた。
それくらいにフランス映画界にとって愛されてきた女優なの
だろう。
その一方でナチス占領下での戦争の記憶や、パリ・カルチェ
ラタンの闘争の思い出、そして映画撮影で訪れていたチェコ
で遭遇した「プラハの春」の弾圧の模様などは、いずれも市
街戦という状況でその恐怖も伝わってきた。
正に20世紀を生き抜いてきたという感じもしてきたもので、
それが1949年生まれの自分にとっても、特に後半の2つの状
況から同時代を生きたという感覚が生じたものだ。
個人的には彼女を観たのは1967年の『気狂いピエロ』からだ
と思うが、その中で上半身裸の彼女が窓を通して監視されて
いることに気付き、あるものを使ってそれを誤魔化すシーン
は鮮烈な印象を残してくれた。
残念ながらそのシーンは本作には登場しなかったが、本作に
引用された作品の中には著作権などの関係で日本では上映で
きない作品/シーンもあり、今回はプロヂューサーの尽力に
より今年限りの限定での上映が許可されたものだそうだ。
今観るしかないという作品だ。
公開は6月13日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次
ロードショウとなる。
なお同じく著作権の関係で来年以降日本での公開が困難にな
る『気狂いピエロ』もディジタルリマスター版により同劇場
にて上映される。

この週は他に
『いつくしみふかき』
(劇団チキンハート主宰の遠山雄企画、出演で、ベテラン俳
優の渡辺いっけいが映画初主演を果たした作品。山間の村に
死ぬためにやってきたという男は、村の娘と結婚し妊娠させ
るが、出産当日に実家で空き巣を働き、村を追い出される。
それから30年が経ち、成長した子供はぐうたらで、ダメ男に
なっていた。そこに父親が戻ってくる。しかしともにダメな
親子は村を追われ、反発しながらも叔父が神父を務める教会
に身を寄せる。そして一つ屋根の下で暮らし始めるが…。脚
本と監督は遠山の盟友で舞台演出家の大山晃一郎。共演は平
栗あつみ、榎本桜。他に黒田勇樹、三浦浩一、眞島秀和、塚
本高史、金田明夫らが脇を固めている。渡辺と遠山がダメな

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03月29日(日)
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