ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■SKIN、ワンダーウォール(精神0、はちどり、色男ホ、イップ・マン4、アドリフト、水上のF、吉開菜央、心霊喫茶、HOKUSAI、窮鼠はチーズ)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『短編版』“Skin”
『SKIN/スキン』“Skin”
2019年6月30日題名紹介『ロケットマン』などのジェイミー
・ベル主演で、全身が白人至上主義を掲げるタトゥーに覆わ
れたスキンヘッドの差別主義者の男性を描いた実話に基づく
とされる作品。
映画の始まりは反ファシストの抗議デモに襲い掛かるスキン
ヘッドの集団。その先鋒に立つのが主人公のブライオンだ。
幼い頃に親に捨てられた彼は、白人至上主義者の夫婦に育て
られ、その教えを守って集団の幹部にもなっている。
そんな男たちは、黒人と見れば見境なく襲って打ちのめし、
モスクは焼き討ちして中にいた違法入国者を焼き殺すことも
厭わない。しかしそんな折、ブライオンの心にふと何かが芽
生え始める。
そしてコーラス営業する3人の娘を育てるシングルマザーに
出会ったブライオンは、彼女たちとの平穏な生活を夢見始め
るが…。白人至上主義集団からの離脱は認められず、その嫌
がらせは壮絶な戦いへとエスカレートする。
それでもブライオンにはある救援の手が差し伸べられ…。
共演は2017年4月紹介『ゴースト・イン・ザ・シェル』など
のダニエル・ヘンショール、2013年5月紹介『コンプライア
ンス』などのビル・キャンプ、2013年1月紹介『ゼロ・ダー
ク・サーティ』などのマイク・コルター。
そして養母役で2020年2月紹介『囚われた国家』などのヴェ
ラ・ファーミガと、短編版にも出演のダニエル・マクドナル
ドがシングルマザーを演じる。
脚本と監督は、短編版で2019年アカデミー賞・短編映画賞を
受賞したガイ・ナティーヴ。本作でも2018年のトロント国際
映画祭にて国際映画批評家連盟賞を受賞している。
映画の最後には本物のブライオンの姿も登場して、その壮絶
な実態も目の当たりにされる。そこには25回、16カ月に及ん
だとされるタトゥー除去の様子も描かれ、心身共に更生して
行く姿が提示される。
白人至上主義、若しくは人種差別主義は、今現在のアメリカ
合衆国が抱える最大の社会問題だと思われるが、本作の物語
の元となった実話は2005年のことだそうで、それから14年が
経っても状況はあまり変わっていないのかもしれない。
はっきり言って合衆国は、先住民を駆逐し、奴隷制度で国を
成してきた訳で、そんな国が簡単に差別主義を捨てられない
のは明らかだが。それが現状では経済の行き詰まりなどで助
長されていることも確かだろう。
本作はそんな状況下で生み出されたアメリカの良心とも言え
るものだ。しかし本作の完成までには7年の歳月が費やされ
たというのだから、その良心も国民からの満帆の支持がある
訳ではないのだろう。
そんな中で本作の監督らは、まず短編作品を制作してその道
を探って行くが、試写会ではその短編も観ることができた。
それは主張するところは本編と同じなのだが、描写は皮肉に
満ちたブラックコメディとも言える作品だった。
その笑いも誘う作風は本編の深刻さとは裏腹なもので、これ
を以って本編の資金集めをしたということには、ある種の確
信犯的な爽快感も得られたものだ。自らの信念のためにこれ
を出来た監督らの頭の良さも感じられた。
もっとも試写会場では、監督の意図も理解せずに「短編の方
がおもしれえ」などと言っている人もいたが…。これを他山
の石としないようにはしたいものだ。
公開は5月9日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

『ワンダーウォール 劇場版』
2003年10月紹介『ジョゼと虎と魚たち』でデビューした脚本

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03月08日(日)
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