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On the Production
by 井口健二
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■水曜日が消えた(ポルトガル、街の上で、ソニックTM、ハリエット、あなたの顔、ドヴラートフ、最高の花婿2、凱里、グランド・ジャーニー)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『水曜日が消えた』
2020年2月紹介『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト』で
2014年度に選出された吉野耕平の脚本、監督、VFXによる
長編デビュー作。各曜日ごとに入れ替わる7つの人格が同居
する多重人格を描いたオリジナル脚本の映画化。
主人公は火曜日の人格。几帳面な性格で読書好きだが、火曜
日は図書館が休館日だ。しかも月曜日の性格がだらしなくて
朝起きるとベッド回りが大変だったりする。そして大学病院
に通院するのも彼の役目だ。
こんな彼の症状は幼い頃に遭った交通事故が原因で、そのた
め脳が多重になったようなのだが、その日の状況を彼自身は
全く記憶していなかった。それでも大学の研究者の許でいろ
いろな治療は行われていた。
そんな彼の家には小学校で同級生だったという女性が毎日の
ように現れる。出版社に勤める彼女は、近くの作家の自宅に
原稿の催促に来たついでに寄るというのだが、多重人格の彼
のことを理解する数少ない人物だ。
その多重人格は毎夜深夜に入れ替わるもので、その間の6日
間のことは全く感知できない。そのため連絡ノートで互いの
状況を報せ合うことになっているが、特にアウトドア派の日
曜日の行動は羨望の的になっていた。
ところがある日、朝の定刻に目覚めた主人公は周囲の微妙な
違いに気付く。実はその日は水曜日で、彼は2日間続けて人
格を保っていたのだ。この状況に主人公は、取り敢えずその
事実を隠してしまうのだが…。
初めて過ごす水曜日には、図書館が開館しているなど様々な
変化が彼にもたらされる。そこには図書館の司書との淡い恋
心も生じるが、その一方で彼をこのようにした事故の状況が
徐々に思い出され始める。
出演は2019年8月11日題名紹介『台風家族』などの中村倫也
と、2019年12月8日題名紹介『架空OL日記』などの石橋菜
津美。他に中島歩、休日課長、深川麻衣、きたろうらが脇を
固めている。
多重人格というと最近ではSF作家ダニエル・キイスの諸作
が有名になってしまったが、映画では1957年度のアカデミー
賞でジョアン・ウッドワードが主演女優賞を獲得した“The
Three Faces of Eve”が記憶される。
この映画は日本未公開のようだが、実は原作となった実話に
基づくハーヴェイ・M・クレックリーの著作は、中学生の頃
に当時日本でも刊行されていたReader's Digestで読んで衝
撃を受けたものだった。
従ってこのテーマに関しては多少思い入れがあるが、そんな
目で本作を観ていると、医学的な見地はともかく物語として
はそれなりに上手く出来ていると感じた。特に人格間の対立
や主人公が損な役回りなのも面白く観られたものだ。
また、きたろうが演じた研究者の思いなども、なかなか良い
感じに描けていたし、難しい演じ分けをしっかりと表現した
中村にも感心した。そして多重人格とは別に生じるドラマに
も違和感なく良い感じを持てた。
VFXの表現もドラマにマッチしており、監督の思い入れも
心地よく感じられたものだ。
公開は5月15日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『ポルトガル、夏の終わり』“Frankie”
(ユネスコ世界遺産にも登録されているポルトガルの古都シ
ントラを背景に、2018年5月13日題名紹介『エヴァ』などの
イザベル・ユペールが少し我儘なスター女優を演じるドラマ
作品。その年の夏を避暑地でもある当地のホテルで過ごす女
優は、ある目的から家族を呼び寄せる。そこには現在の夫と

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02月23日(日)
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