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On the Production
by 井口健二
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■第32回東京国際映画祭<コンペティション部門>
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※今回は、10月28日から11月5日まで行われていた第32回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。     ※
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<コンペティション部門>
『ネヴィア』“Nevia”
イタリア・ナポリを舞台に、恵まれない環境に暮らす少女が
上を向いて生き抜いて行く姿を描く。イタリア映画では毎年
定番のような話と言われればそれまでだが、やはりこの手の
成長物語は見ていて気持ちが良い。サーカスが背景というの
もノスタルジーが感じられてよかった。Q&Aでピエロの化
粧を聞かれた21歳の女優が「1954年『道』のジェルソミーナ
へのトリビュート」とさらりと言ってのけたのも感動した。
無冠に終わったが、僕は気に入った作品だ。

『喜劇・愛妻物語』
売れない脚本家といわゆる鬼嫁との日々を描いた家族愛(?)
の物語。審査員は脚本賞に選んだ作品だが、見ていて面白み
には欠ける作品だった。なお青春18きっぷで香川県に行くと
いう展開だが、自分の経験で夜行列車以外では富士山が見え
る界隈でボックス席の普通列車は見たことがなく、この辺は
しっかりと考証をしたのか疑問にもなった。物語全体も夫婦
を長くやっていればあり得る話で、多少の誇張はあっても、
それが映画的に面白くなっているようにも見えなかった。

『動物だけが知っている』“Seules Les Bêtes”
開幕はアフリカの大地、そこから北部フランスの雪に閉ざさ
れた高地に飛び、そこでの1人の女性の失踪から物語が始ま
る。その行方を追って様々な謎が提示され、個々の謎が解決
されて行く。何とも手の込んだ展開の物語で、その展開ごと
に時間を遡って行く構成も見事だった。僕が審査員ならこの
作品に脚本賞を贈りたいと思ったものだ。そして現代を象徴
するような事件の発端が…、これも気に入るところだった。
最優秀女優賞と観客賞を受賞した。

『アトランティス』“Atlantis”
2025年以降の近未来が背景の作品。地雷の除去など戦後処理
が続く中で、戦時中に処刑されて埋められた遺体の発掘も行
われている。発端が処刑のシーン、結末が発掘のシーンとな
るが、そこをサーモグラフィの映像で描いているのはいろい
ろ意味があるようにも感じられた。本作には審査員特別賞が
贈られたが、僕にはそれほどの意義は感じられなかった。ま
あ地雷処理に20年は掛かるなど、反戦的な意味ではかなりの
メッセージ性は感じたが…。

『ディスコ』“Disco”
始りはディスコダンスのコンテストで、そんな話かと思って
いたら本筋はキリスト教系の宗教映画だった。しかも結末は
宗教の強さみたいな描き方で、僕はQ&Aを見なかったが、
見た人によると監督は宗教に反論していたそうだ。でも映画
はそのようには見えなかったし、僕はこの手の映画は性に合
わない。ハリウッドでは毎年1本ぐらいあるし、そういう需
要もあるのだろうけど…。実際の宗教関係者はどう見るのだ
ろうか。

『ラ・ヨローナ伝説』“La Llorona”
2019年4月紹介のホラー映画と同じ伝説に基くポリティカル
・フィクション。本作では伝説は自明としてあまり語られな
いが、先の作品を見ているとその辺りは明確で、しかもその
復讐の相手が独裁権力者という、政治映画として巧みに作ら
れているのも感心した。ホラーと政治の見事なマッシュアッ
プ。僕ならこの作品にグランプリも考えるところだ。なお本
作はGAGAによる日本配給が決まったようなので、その際に機
会があったらまた紹介したい。

『わたしの叔父さん』“Onkel”
主人公はデンマークの酪農地帯に暮らす女性。獣医を目指し
ていたが、両親の他界と同時期に叔父が倒れ、道半ばで介護
と飼牛の世話に追われる日々となった。しかし近所の獣医は

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11月06日(水)
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