ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■第32回東京国際映画祭<コンペティション以外>
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※今回は、10月28日から11月5日まで行われていた第32回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。     ※
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<日本映画スプラッシュ部門>
『i−新聞記者ドキュメント−』
2019年4月28日題名紹介『新聞記者』の元となった女性記者
の姿を、オウム真理教を題材にした『A』などの森達也監督
が追ったドキュメンタリー。登場するのは東京新聞社会部記
者の望月衣塑子。彼女は社会部=民間の目線で沖縄辺野古や
福島、「森友学園」、「加計学園」問題などを取材し、それ
を首相官邸での記者会見で追及する。その姿は官邸からは煙
たがられ、質問には妨害も行われる。本作の題材は望月記者
だが、監督の視線はその先にある安倍政権に多く向けられて
おり、その横暴さが巧みに描かれた作品だ。映画祭の上映で
は海外記者向けに各事件の概要も配られていたようだ。なお
この作品は11月15日より、東京は丸の内ピカデリー他で全国
順次ロードショウとなる。

<Japan Now部門>
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』
一昨年の映画祭では2017年10月紹介の『花筐』が上映された
大林宣彦監督の最新作。物語の大筋は、映画館の閉館記念で
戦争映画の特集が組まれる。そこに戦争を知らない若者たち
が集まるが、その映画館では選ばれた者が映画の世界に入り
込むことができた。前作も反戦色の強い作品だったが、本作
でも戊辰戦争から第2次世界大戦までの様々な戦争の中で翻
弄される庶民の姿が描かれる。そしてそれは広島原爆で全滅
した劇団・桜隊への思いに繋がる。そんな物語が合成も満載
の大林ワールドの中で展開される。出演は厚木拓郎、細山田
隆人、細田善彦、吉田玲。さらに前作に続いての山崎紘菜、
常盤貴子、そして初参加の成海璃子らが脇を固めている。他
にもいろいろな俳優が出ていたようだ。なお本作は2020年春
の公開が予定されており、その際に再度紹介したい。

<CROSSCUT ASIA部門>
『停止』“Ang Hupa”
昨年の映画祭で上映された『悪魔の季節』ラヴ・ディアス監
督による新作で、上映時間4時間42分の近未来映画。物語の
背景は2031年に近海の火山が大爆発し、吹き上がった火山灰
によって東南アジア全域が闇に閉ざされているという世界。
そんな地域の某国では独裁政権が厳しい圧政を敷いていた。
そしてインフルエンザの蔓延が始まり、政権は予防接種の義
務化と違反者の処罰を開始する。しかしそこには反政府勢力
を一掃する陰謀も隠されていた。さらに「黒い雨」作戦とい
う究極の粛清計画も進む。その一方で反政府勢力は政権転覆
の計画を進めていたが…。話は多岐に繰り広げられて一概に
は把握できないが、壮大なディストピアが描かれる。

『リリア・カンタペイ、神出鬼没』
   “Six Degrees of Separation from Lilia Cuntapay”
名前は知られていないが、その顔を見れば誰もが知る魔女顔
の怪女優を追ったやらせも満載のドキュメンタリー(?)。下
町のドヤ街のような町に暮らし、個人の電話も持たず、知り
合いの取次で出演依頼を受ける。でもお金があれば地元の大
会のトロフィーも寄贈する。そんな下積みの女優が権威ある
賞の助演賞にノミネートされる。こうしてテレビの取材が来
たりの騒ぎとなるが…。どこまでがフェイクか判らない作品
だが、作中で言及される映画はほとんどが実在の物で、中で
も『ブロークダウン・パレス』はアメリカのデータベースで
出演が確認できた。ただし彼女がノミネートされる賞の方は
フェイクのようだが、実は本作のおかげで、彼女が2011年の
Cinema One Originals Digital Film Festivalにおいて主演
女優賞を受賞したというのは愉快なところだ。

『永遠の散歩』“Bor Mi Vanh Chark”

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11月07日(木)
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