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On the Production
by 井口健二
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■虹色の朝、シライサン(オルジャス、シュヴァルの理想宮、シティーH、エンド・オブ・S、アニエス/ヴァルダ、ある女優の、ドルフィン・M)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『虹色の朝が来るまで』
自らが聾者である今井ミカ監督が同じ障碍を持つ女性たちを
描いたドラマ作品。
主人公は群馬県前橋市に暮らす聾者の女性。美容室で働いて
いるが、そこには聾者の客もいて彼女は生き甲斐を感じて働
いているようだ。そんな彼女が婚前旅行の計画を進めていた
ボーイフレンドに別れを告げる。
それは彼女自身の心情の変化にもよっていたが、実はルーム
シェアの同じ障碍を持つ女性に新たな感情を持ち始めていた
のだ。そしてそのことを家族に打ち明けると、今までは理解
者だった母親から激しい非難を浴びてしまう。
そんな主人公にルームシェアの女性は東京の渋谷に行くこと
を誘う。そこである人たちと会うために。
出演はいずれも聾者である長井恵里と小林遥。他に玉田宙、
菊川れん、ノゾム、竹村祐樹。さらに佐藤有菜、太田辰郎と
いう人たちが脇を固めている。
題名の「虹色」がLGBTのシンボルを意味していることは事前
に理解していた。従ってこの作品では2重の迫害に会ってい
る人たちを描いているものだが、実は障碍に対する迫害は多
少は描かれるが主ではない。
むしろLGBTへの迫害を際立たせる意味合いが持たされている
ようにも感じる。そしてそこには未来に対する希望も描かれ
ていることが、本作の特徴とも言えるところだろう。それが
全ての迫害への回答の様にも感じられた。
聾者を描いた作品では、今までに2010年5月紹介『アイ・コ
ンタクト』、2016年3月紹介『LISTEN リッスン』、2016年
8月紹介『スタートライン』なども観てきたが、それらはい
ずれもドキュメンタリーだった。
そこには障碍を持つことの苦労(勿論それは重要だが)などは
描かれるものの、結論として何らかの達成感が得られること
には、自分の中に予定調和的な違和感が生じたことも否めな
かった。
その点が本作ではドラマとすることで、より明確に問題点が
描かれると共に、より主人公らの心情に沿ってその未来が展
望されているようにも感じられた。そしてそれが明るいもの
であって欲しいと願うものだ。
聾者を描いたドラマの作品では、1961年の『名もなく貧しく
美しく』が印象深いが、その中での名シーンとされる満員の
列車の車両連結部を挟んだ手話による対話が、本作では渋谷
の雑踏の中で再現されているのには感動した。
このシーンでは通常の会話を妨げる騒音がキーとなるが、実
は今井ミカ監督の過去の作品はいずれも無音で制作されてい
たのだそうだ。それが今回の作品では音響を施すことにも挑
戦している。
それは僕らには少し過剰に聞こえたりもするものだったが、
それが逆説的にこの物語の世界を語っているようにも感じら
れた。実はこの音響が彼女たちには聞こえていないのだとい
うことも、心して観るべき作品だろう。
公開は11月15日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ
ート心斎橋で開催される「のむコレ3」の1本としての上映
となる。
『シライサン』
2007年3月紹介『きみにしか聞こえない』などの原作者とし
て知られる作家の乙一が、本名の安達寛高の名義で長編映画
監督デビューを飾った作品。
物語の発端は街なかでの怪死事件。その死因は医学的に有り
得るものとされるが、その死に様は異様だった。そして数日
後、もう一件の同様の怪死事件が起き、2人の被害者に繋が
りがあったことから物語が動き始める。
男女2人の被害者がバイト先の同僚で、事件の前にもう1人
の女性と3人で温泉宿に旅行に行っていたというのだ。そこ
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10月13日(日)
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