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On the Production
by 井口健二
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■風の電話(IDOL-あゝ無情-、決算!忠臣蔵、カツベン、積むさおり、だれもが愛しいC、スーパーT、EXIT、ジョン・D、ひとよ、男はつらいよ50)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『風の電話』
2009年11月紹介『ユキとニナ』などの諏訪敦彦監督が2016年
放送のテレビドキュメンタリーから発想して描いた東日本大
震災を背景とする物語。
主人公は震災による津波で家族や級友を失った少女。震災後
に広島に住む叔母の家に預けられた少女は、その日から8年
が経って今は高校3年生となっている。しかし心に残る傷跡
が消えることはない。
そんな少女がある切っ掛けから故郷の岩手県大槌町に帰ろう
とするが…。ヒッチハイクで向かう彼女の周囲て様々な出来
事が起き、行く先々でそれぞれの困難に立ち向かう家族の姿
を見ることになる。
出演は、2019年6月23日題名紹介『おいしい家族』などのモ
トーラ世理奈。前作ではかなりはじけた役だったと記憶する
が、本作では悲しみをたたえた表情を変えない役。でも何か
を背負っている感じは共通かな。
他に西島秀俊、西田敏行、三浦友和、渡辺真起子、山本未來
らが脇を固めている。諏訪監督は、台本は作るものの現場で
は即興芝居を重視するということで、以前にも組んだことの
ある西島、三浦、渡辺をはじめベテランたちが支えている。
因に本作の台本は、2014年『百瀬、こっちを向いて。』や、
2017年8月27日題名紹介『AMY SAID』などの狗飼恭
子との共同作られたものだ。
映画の前半で叔母の家に帰宅した主人公が「ただいま」と言
わないことに違和感を覚えた。しかしそれが後半の重要なポ
イントで意味を持っていた。そこからなだれ込むように進む
展開に感動を深くしたものだ。
そして結末の電話に向き合うシーン。実はこのシーンにはシ
ナリオはなく、従ってここのモトローラの台詞は全て即興。
実際はテイク2が使われているそうだが、女優本人が「でき
た気がする」と言ったものが採用されている。
試写後にそのプロダクションノートを読んで、改めて涙がこ
み上げる感動のシーンだった。映画の物語は虚構だけれど、
そこに現実が折り重なる。諏訪監督の映画術が見事に決まっ
たと言えるシーンだ。
物語には震災だけでなく、現在の日本が抱えている様々な問
題も提起され、ヨーロッパでも活躍する諏訪監督の国際的な
視野も見ることのできる作品だった。多少長めの作品ではあ
るが、見る価値のある作品だ。
なお映画は、岩手県大槌町に実在する「風の電話」の設置者
である佐々木格、祐子夫妻の協力の許に製作されている。
公開は2020年1月24日より、東京は新宿ピカデリー他で全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『IDOL−あゝ無情−』
(2018年12月9日題名紹介『世界でいちばん悲しいオーディ
ション』に続く音楽会社WACK主催合宿オーディションの
本年度分。やっていることは前作と同じなのかな。早朝マラ
ソンの順位などで脱落者が決まり。最後まで残った者がいき
なりデビューとなる。ただし今回は、元からの所属グループ
BiS の生き残りを賭けた戦いも行われており、主にカメラの
焦点はそちらに向けられている。従って今回のタイトルから
は「オーディション」の文字が省かれているのだろう。それ
にしても途中でルールがコロコロ変わるなど、主催者側の考
えに一貫性がないことも前作と同じで、到底真剣なものには
見えてこない。それもまあヴァラエティということで許され
る作品なのかな。出ている彼女たちは本当に真剣なのだろう
けど…。監督は、前作に引き続いての2008年12月紹介『遭難
フリーター』などの岩淵弘樹。公開は11月1日より、東京は

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10月06日(日)
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