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On the Production
by 井口健二
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■工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(アートのお値段、柴公園、トム・オブ・フィンランド、CROSSING、さらば愛しきアウトロ-)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』
“공작”
1997年の韓国大統領選挙戦を巡り、その背景に蠢く韓国国家
安全企画部(安企部=旧KCIA)の暗躍を描いた実話に基づく
とされる作品。
物語の始まりは1992年。1人の韓国軍将校にある任務が打診
される。それは北朝鮮の核開発を懸念する安企部から、その
実態を探るためのスパイになれというものだった。その命を
受けた主人公は軍籍を離脱し、実業家となって北京に赴き、
そこで北朝鮮との接触を開始する。
そんなある日、北朝鮮製品の貿易に手広く商談を進める彼の
許に、北京駐在・対外経済委員会の所長から面談の申し込み
が届く。それは緊急な現金調達の依頼で、その所長こそは金
正日にも単独で会えるという側近中の側近だった。
その依頼に応えた主人公は、それに続く様々な“テスト”も
掻い潜り、平壌でのCM撮影という名目を持って遂に金正日
との面会にまで漕ぎ着けるが…。一方の韓国では選挙戦での
野党候補の躍進による新たな局面が生じていた。
偽ロレックスに模造の考古品など虚々実々のやり取りの中で
北朝鮮の中枢に迫って行く様子や、CM撮影のロケハンと称
して核開発の疑われる地方で関係者との接触を目論むなど、
正にスパイ戦という物語が展開される。
主演は2016年8月21日題名紹介『華麗なるリベンジ』などの
ファン・ジョンミン。他に『華麗なる…』でも共演のイ・ソ
ンミン。さらに2017年2月5日題名紹介『お嬢さん』などの
チョ・ジヌン、2019年4月紹介『神と共に』などのチュ・ジ
フンらが脇を固めている。
脚本と監督は2007年1月紹介『許されざるもの』や、2013年
『悪いやつら』、2014年『群盗』などのユン・ジョンビン。
なお脚本は2013年『ハナ奇跡の46日間』などのクォン・ソン
フィとの共同になっている。
実は上記の監督作品及び脚本作品はいずれも試写を観ている
が、描かれている韓国の国内問題が自分の中で咀嚼し切れず
紹介を割愛していたものだ。特に『ハナ』に関しては当時の
日韓の政治問題も引っ掛かった。
その『ハナ』は1991年の実話に基づくもので、本作とも近い
時代背景だったが、その際に気になった政治問題的な描写が
本作にはなく、その解釈は迷うところ。まあ歴史的には本作
の方が正しいと思うが。
いずれにしても軍の内部事情や内政問題、南北問題などにも
精通した監督、脚本家による作品で、本作が事実に基づくこ
とも確かだろう。近い隣国の話ではあるが、軍政国家の恐ろ
しさみたいなものも見事に描かれている。
2018年3月11日題名紹介『タクシー運転手』や、2018年7月
紹介『1987、ある闘いの真実』など、近年の政治問題を描く
韓国映画はその舌鋒も鋭いが、本作もそれに続く作品と言え
るものだ。
派手なアクションはないが、平壌の様子や金正日の別邸など
本来は写せるはずのない背景のVFXによる再現も巧みで、
純粋なスパイ映画として頗る面白い。エンターテインメント
としても上級の作品だ。
ただし1996年4月5日の顛末に関しては事実と異なっている
ようで、その点は気になった。もちろん意図的な創作だろう
が、実はこの部分の真相だけが物語の中でも曖昧なもので、
そのことを敢えて強調しているようにも感じられた。
これは映画制作者たちの怒りなのかな?
公開は7月19日より、東京はシネマート新宿他にて全国順次
ロードショウとなる。
この週は他に
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05月19日(日)
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