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On the Production
by 井口健二
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■セブンガールズ(ある闘いの記述、ずぶぬれて犬ころ、コレット、神と共に 第一章:罪と罰、殺人鬼を飼う女、轢き逃げ、グリーンB記者会見)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『セブンガールズ』
元ジャニーズ事務所に所属のダンサーだったというデビッド
宮原が1998年に旗揚げした劇団前方公演墳で、2004年の初演
後、4度の再演も行っているという人気演劇を、宮原自身の
脚本・監督により映像化した作品。
物語の舞台は戦後間もない東京の赤線地帯。焼け跡に建つ、
嵐が来れば飛んでしまいそうなバラック小屋では、娼婦たち
が貧しいながらも心の通った共同生活を送っていた。当時も
彼女たちの仕事は周囲から蔑まれるものだったが、彼女たち
はそんな逆境の中も力強く生きていたのだ。
そんな彼女たちは客から受け取った金の一部をリーダー格の
娼婦に渡し、その金で共同生活の食料なども求めていたが、
その中から地元の暴力団へのみかじめ料なども払っていた。
ところが彼女たちの小屋に、関西系の別の暴力団の構成員が
近づいてくる。
一方、その他の常連客の中には、学生や元軍隊の上等兵や、
さらに娼婦に会いに来ても身体に触れようともせず、金だけ
を置いて帰る役人などもいたが…。彼女たちの健康を気遣う
町医者や女性運動家なども絡む中、暴力団の抗争が激しくな
り、彼女たちの生活が翻弄されて行く。
出演は舞台にもキャスティングされた、坂崎愛、堀川果奈、
安達花穂、河原幸子、藤井直子、斉藤和希、樋口真衣、広田
あきほ、斉藤みかん、上田奈々。他に小野寺隆一、中野圭、
安藤聖、織田稚成、津田恭佑、西本涼太郎、新地秀毅、仲田
敬治、勝俣美秋らが脇を固めている。
このキャスティングはほぼ演劇人で占められており、つまり
この作品は、舞台の配役もそのままに映像化されたもののよ
うだ。
映画は、その開幕から見るからに舞台演劇という感じの台詞
回しや演技が登場し、それには違和感になる部分もある。し
かしそれが、逆に本作が舞台そのままの映像化という感覚も
もたらしてくれる。ここは観る側の嗜好にもよるが、僕には
好ましく感じられた。
そして描かれる内容は、とにかく優しさに溢れたもので、涙
あり笑いありの物語が、宮原作詞、吉田トオル作曲の主題歌
「星がいっぱいでも」と共に心地よく展開されて行く。それ
は厳しい状況の中で逞しく生きて行く女性たちの姿であり、
現代の女性にも共感されるであろうものだ。
その場所はユートピアであり、ファンタシーに近い感覚もあ
るが、全体的にはリアルに彼女たちの姿が描かれている。苦
しい生活の中でも夢を失わない女性たちの力強い物語だ。
公開は、東京では新宿K's cinemaなどの他、名古屋、大阪で
もすでに行われたものだが、今回はさらに5月18日より横浜
ジャックアンドベティでの1週間限定のロードショウが予定
されている。素敵な作品なので、この他の地方でも観る機会
を作って欲しいものだ。
この週は他に
『ある闘いの記述』“Description d'un combat”
(2019年2月17日題名紹介『シベリアからの手紙』などと共
に、4月6日〜19日に東京は渋谷ユーロスペースにて開催の
「クリス・マルケル特集2019<永遠の記憶>」で上映される
1960年発表のドキュメンタリー。当時は建国12周年を迎えて
いたイスラエルを題材に、これもまた映像詩のような趣もあ
る作品になっている。ただし建国の経緯などに対してはいろ
いろ語りも入るが、パレスチナの問題に関してはまだ認識が
不足かな。その一方でキブツに関してはある種の思い入れも
感じられる。その辺の錯綜した思いが、後年監督自身が一時
期本作を上映禁止にする事態にもなったようだ。その複雑さ
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03月10日(日)
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