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On the Production
by 井口健二
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■第31回東京国際映画祭<コンペティション以外>
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※今回は、10月25日から11月3日まで行われていた第31回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※
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<ワールド・フォーカス部門>
『家族のレシピ』“Ramen Teh”
2014年10月紹介『TATSUMI マンガに革命を起こした男』など
のシンガポールの俊英エリック・クー監督が再度日本文化の
一端との関りを描いた作品。高崎で父親と共にラーメン店を
営んでいた若者が、父の死後、彼が幼い頃に亡くなった母親
のレシピを求めてシンガポールを訪れる。単民族の日本と多
民族のシンガポール。そんな国際的な視点と、何より「家族
のレシピ」が巧みに組み合わされていた。出演は斎藤工。他
に松田聖子、伊原剛志、別所哲也。シンガポール側はマーク
・リー、ジネット・アウらが脇を固めている。
『それぞれの道のり』“Lakbayan”
フィリピン映画生誕100周年を記念した同国で巨匠とされる
ブリランテ・メンドーサ、ラヴ・ディアス、キドラット・タ
ヒミック各監督によるオムニバス作品。中ではメンドーサ監
督の作品が社会性のあるメッセージも含めて一番面白かった
かな。ディアス監督の作品はファンタスティックではあった
が、何が言いたいのか良く判らなかった。そしてタヒミック
監督の作品は家族旅行のドキュメンタリーだが、これではた
だのファミリーヴィデオの感覚で、凡庸という感じがした。
まあメンドーサ作品を観るだけで価値はあったが。
『カーマイン・ストリート・ギター』
“Carmine Street Guitars”
ニューヨークの下町で手作りのギターを商う母親と息子と、
それにその弟子を追ったドキュメンタリー。その店には著名
なギタリストも訪れ、様々な演奏も聴かせてもくれる。その
一方でギターの材料となる樹木が失われている現状や、その
補填として壊される家屋の廃材を調達する話など、中々興味
深い話題も登場する。ただし映画のテーマは純粋に音楽で、
これが映画ファンにどうアピールできるものか。まあ顧客の
中にはジム・ジャームッシュ監督がいたりして、この辺は映
画ファンとしてニヤリとしたが。
『十年』“Ten Years Thailand”
2017年5月紹介の香港版と、2018年9月紹介の日本版に続く
タイ国版。本作は4作品で構成される。因に本作では個々の
題名は示されなかったが、日本版の試写会で配布された資料
に仮題が紹介されていた。
そこに記載の概要と本作とを重ね合わせると、
1本目は「夕日/SUNSET」。軍隊による検閲が横行する時代
背景で、日常を写した写真展がその査察に遭い、つまらぬ言
い掛かりから自主規制を余儀なくされる。
2本目は「キャットピア/CATOPIA」。 主人公は普通に暮ら
しているように見える若者だが、彼のいる世界は猫が支配し
ており、人間は排斥の対象だった。
3本目は「プラネタリウム/PLANETARIUM」。 全体主義的な
体制の世界で若者たちは規律に縛られている。しかしその世
界の真の目的は他にあるようだ。
4本目は「都市の歌/SONG OF THE CITY」。街の中の広場に
建つ軍人の銅像の周辺で公園の整備工事が進んでおり、その
周囲では日常の営みが続いている。
前半の2本にはそれなりの問題意識も感じられ、ドラマ的に
も成立していたが、後の2本は何が言いたいのか理解できな
かった。タイ国民が観ればいろいろ考えるところがあるのか
もしれないが。
この後には台湾版もあるようだが、どうなることか。
『プロジェクト・グーテンベルク』“無雙”
チョウ・ユンファとアーロン・クォックのW主演で、贋金造
りの国際犯罪組織を描いたアクション作品。贋金造りでアク
ションとはいかなるものかと思ったが、これが実に巧みな物
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11月04日(日)
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