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On the Production
by 井口健二
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■第31回東京国際映画祭<コンペティション部門>
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※今回は、10月25日から11月3日まで行われていた第31回※
※東京国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。な※
※お、紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は※
※最少限に留めたつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※
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<コンペティション部門>
『詩人』“诗人”
中国映画の開幕は蒸気機関車。女性が露天掘りの鉱山で働く
夫に弁当を届けに行く。その夫は詩人でもあり、投稿した詩
が雑誌に掲載されて原稿料が送られてくる。そんなこともあ
り夫は有名になって行くが…。背景は1980年代、搶ャ平政権
が経済改革を進め始めた頃。徐々に変って行く社会の中で、
夫婦の立場も微妙に変化して行く。昨年の<ワールド・フォ
ーカス部門>では韓国映画の『詩人の恋』が上映されたが、
本作は時代背景も含めて少し違った物語にはなっている。た
だしそれが観客の目にどう映るか、それが少しノスタルジー
に偏っている点が気にはなった。しかもこのノスタルジーは
部外者には判り辛い。また結末が少し前から読めてしまうの
も、多少物足りない感じがした。
『堕ちた希望』“Il vizio della speranza”
イタリア映画の開幕は川面を疾走するボート。そこには若い
女性と舟を操縦する中年の男性が乗っており、彼らは多数の
男たちに追われている。そして主人公は売春組織に関ってい
るらしい女性。彼女は組織の中で売春婦たちの手配をしてい
る。しかもその組織では妊娠した売春婦に別の使い道もある
ようだ。実はこの展開を理解するまでに多少手間取った。し
かし判ってみるとその内容はかなり強烈だった。物語は最後
に救いはあるが、主人公の名前や彼女が辿る運命に宗教的な
意味合いも感じられ、その点がいろいろ悩ましくもあった。
でもまあ普段のイタリア映画からは想像もつかないような風
景の中で、骨太な物語が展開されて行く。こういう映画が観
られるのも映画祭の魅力だ。
『ホワイト・クロウ』“The White Crow”
日本では2011年12月紹介『英雄の証明』以来となるイギリス
の俳優レイフ・ファインズによる監督作品。旧ソ連の出身で
史上最高のバレエダンサーと言われたルドルフ・ヌレエフの
姿を、現役ダンサーのオレグ・イヴェンコを主演に迎えて映
画化。田舎町の出身ながらトップクラスのバレエ団に上り詰
めるまでの道のりと、初のヨーロッパ公演での出来事が並行
して描かれる。映画では過去の出来事がモノクロワイドと、
1961年当時の出来事がカラービスタサイズで描かれるが、実
は1961年当時の出来事には2つの状況があって、それらが区
別されていないのが判り難い。主人公の服装や髪形など微妙
に違ってはいたようだが、主人公の決断に至る肝心の部分は
もっと明確に描き分けて欲しかった。
『翳りゆく父』“A Sombra Do Pai”
母親を亡くした少女が怪しげなまじないに傾倒して行き、一
方の父親はリストラなども重なって徐々に尋常でなくなって
行く。そんな中で娘の行動は過激さを増して行き…。女性監
督の作品だが、劇中には『ペット・セメタリー』や『ナイト
・オブ・ザ・リビング・デッド』なども引用され、主人公の
少女との繋がりも巧みに表現された作品だった。正に王道の
ホラーという感じの作品でもある。なお本作ではQ&Aにも
参加したが、そこでプロデューサーは本国での大統領選挙の
行方を気にしており、極右候補が当選したら今後のブラジル
映画はかなり窮屈になりそうだとのことだった。結果はそう
なってしまったものだが、同国の映画では社会性のある作品
も多かったので、気掛かりなところだ。
『三人の夫』“三夫”
2018年2月4日題名紹介『メイド・イン・ホンコン』などの
フルーツ・チャン監督による香港の人魚伝説に基づく作品。
映画祭のジャンル分けではSFファンタシーとなっているも
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11月03日(土)
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