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On the Production
by 井口健二
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■A GHOST STORY(殺る女、13回の新月のある年に、遊星からの物体X、アンクル・ドリュー、シャルロット−すさび−)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『A GHOST STORY』“A Ghost Story”
2014年公開『セインツ 約束の果て』の監督デヴィッド・ロ
ウリーと、主演のケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
が再結集して描いた幽霊譚。
登場するのは郊外の一軒家に暮らす音楽家の夫とその妻。暮
らし向きは裕福ではないが、夫はその家に愛着しているよう
だ。一方の妻は何度も引越しの経験があり、引越すときには
戻って来た時のために小さなメモを残すのだと語る。そして
妻は今も引越しを望み、それが諍いとなる。
ところが夫が交通事故で急死し、病室で看取った妻がシーツ
を遺体の頭から掛けて部屋を出ると、突然そのシーツが持ち
上がり、幽霊の姿となって家へと戻ってくる。しかしその姿
は妻には見えず、妻は引越しの準備をして柱の割れ目にメモ
を押し込み、思い出の残る家を出て行ってしまう。
その様子をもどかしげに見ている幽霊だったが…。幽霊はそ
の後を追うことはできず、隣家の窓にも同様の幽霊がいて、
幽霊は家に居ついて帰りを待つのだと教えられる。そして家
には様々な家族が暮らし、年月が過ぎて行くが、妻は一向に
帰ってこなかった。
夫役のアフレックは、最初の内は普通の容姿で登場するが、
途中からは目の位置に2つの穴の開いたシーツを被ったまま
で、その姿で様々な感情も表現する。これはかなり挑戦的な
演技となっている。
幽霊の存在は作者の思考によっていろいろな解釈が可能にな
るが、本作の場合はある種の地縛霊なのかな。病院から戻っ
て以降は家から出ることもできず、隣家の幽霊ともコミュニ
ケーションはするが直接会いに行くことは叶わない。従って
かなり寂しい状況となるものだ。
それがある切っ掛けから時空を超えた存在となるのだが、そ
の解釈がまたいろいろと頭を悩まされる。その辺が、観客を
悩ませ楽しませる仕掛けにもなっている作品だ。正直僕もか
なりじっくりと考えて、一つの結論には達したが、果たして
それが正しいかどうかも判らない。
幽霊譚というと、2010年10月に日本版のリメイクを紹介した
1990年公開『ゴースト/ニューヨークの幻』が著名だが、本
作もそれに通じるところもある。違うところも多々あるが、
多分、西欧人の幽霊に対するイメージではこれらに共通する
部分が基本なのだろう。
そのイメージの東洋人との違いを考察するのも面白いと思う
が、現世に残した未練みたいなものは世界共通のようだ。そ
こからの解放が本作のテーマのようにも見え、そのある種の
希望が本作を心地良いものにもしている。そんな風な作品に
僕は捉えた。
映画を観ていろいろ考察することも楽しめる作品だ。
公開は11月17日より、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン
トラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント他にて全国ロード
ショウとなる。

この週は他に
『殺る女』
(2018年6月紹介『私の人生なのに』などの知英の主演で、
腕の刺青を唯一の手掛りに復讐を誓った殺し屋の女を描いた
作品。幼い頃に両親を殺された主人公はその犯人を追い求め
ていたが…。共演は2018年5月紹介『世界でいちばん長い写
真』などの武田梨奈と、2018年7月29日題名紹介『DTC』
などの駿河太郎。脚本と監督は2012年2月紹介『不良少年』
などの宮野ケイジ。主演の知英は上記作の前に『レオン』と
いう作品にも主演しているが、今回はそれなりのアクション
にも頑張っている。その一方で武田は今回も空手は封印の役
柄で、演技派として悪くはないが、そろそろ何かを期待した

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09月16日(日)
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