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On the Production
by 井口健二
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■教誨師(タリーと私の秘密の時間、バンクシーを盗んだ男、追想、19歳の肖像、詩季織々、マイナス21℃、ディヴァイン・D、祈り)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『教誨師』
2018年2月に急逝した俳優の大杉漣が主演と共に初エグゼク
ティヴ・プロデューサーも務め、2009年12月紹介『ランニン
グ・オン・エンプティ』などの佐向大の脚本・監督で、死刑
囚にキリスト教の教えを説く牧師の姿を描いた作品。
巻頭では死刑囚に対する様々な規定などが紹介され、その中
で親族の他に主人公のような宗教関係者が面会出来ることが
明示される。そして映画は、拘置所内の一室で刑務官の立ち
会いの許、死刑囚と向き合う主人公が描かれて行く。
その主人公が相対するのは、暴力団の元組長という男や、世
間に拗ねてしまっているような男。またホームレス風の男。
さらに浪速のおばちゃん風の女性まで、様々な連中との面接
が続いて行く。
その中にはいつ刑を執行されるか判らない恐怖からか、妄想
を抱き始めているような人物も登場する。そんな連中をなだ
めたり、時には声を荒げたりもしながら宗教心を目覚めさせ
ようとする主人公が描かれて行く。
それと同時に、主人公がその仕事を始めるに至った自身の事
情も描かれ、そこには少しファンタスティックな味付けもな
される。その一方で、現実的な死刑の執行の手順なども紹介
される。
共演は、古舘寛治、光石研、烏丸せつこ。さらに舞台演出家
でもある玉置玲央。マーティン・スコセッシ監督の「沈黙−
サイレンス−」にも出演の五頭岳夫。佐向監督のデビュー作
に出演の小川登らが様々なキャラクターの死刑囚を演じる。
題名からは、最後に死刑囚が改心するような感動的な物語を
想像したが、脚本も手掛けた佐向監督はそのような生半可な
作品は指向せず、ある意味死刑制度そのものに向き合うよう
な作品をかなりドライな演出で描いている。
その制作態度は上記の『ランニング…』の紹介文を読み返し
ても、その頃から全く変っていないようだ。その才能を大杉
が見い出し、自らのプロデュースで本作を実現させたものだ
が、この顔合わせが1作で終ってしまうことも残念だ。
なお大杉は生前、熱烈な徳島ヴォルティスのサポーターであ
ったことでも知られるが、本作ではそこかしこにサッカーネ
タが振られていることも嬉しくなった。これは2017年12月紹
介『ホペイロの憂鬱』の脚本も手掛けた佐向監督のお蔭でも
あるかもしれないが、改めて大杉氏の冥福を祈りたくもなる
ものだった。
公開は10月6日より、東京は有楽町スバル座他にて全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『タリーと私の秘密の時間』“Tully”
(2007年『JUNO』の脚本でオスカー受賞のディアブロ・
コーディと、監督賞の候補になったジェイスン・ライトマン
が、2012年2月紹介『ヤング≒アダルト』のシャーリズ・セ
ロンを再び主演に迎えた、かなり不思議な感覚のある作品。
主人公は仕事に家事に育児に完璧主義と揶揄されそうに働く
女性。しかし3人目が生まれ、過負荷状態となる。そこに夜
だけのベビーシッターとして若い女性がやって来る。彼女も
また全てを完璧にこなす女性だったが、さらに主人公の悩み
の相談相手としても優れていた。こうしていろいろな負担か
ら解放される主人公だったが、そこにはある秘密が隠されて
いた。この結末がいろいろ議論の的となる作品だが、僕はそ
の前の旧友との再会や、女性の自己紹介にもヒントがあるよ
うに感じた。共演は2017年10月紹介『ブレードランナー』な
どのマッケンジー・デイヴィス。公開は8月17日より、東京
はTOHOシネマズシャンテ他で全国順次ロードショウ。)


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07月01日(日)
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